オフィス賃料36カ月下落 東京都心8月末、空室率は低下
オフィス仲介大手の三鬼商事(東京・中央)は8日、東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の8月末のオフィスビル平均空室率が前月比0.11ポイント低下し、8.65%になったと発表した。空室率の改善は5カ月連続だが、賃料は3年にわたって下落している。賃料反転のカギを握るビルオーナーの心理は弱気なままで、市況回復にはなお時間がかかりそうだ。
比較的規模の大きい入居事例が相次いで、空室の解消につながった。立地や耐震性に優れるビルへの移転を望む企業が多く、需要を下支えした。防災面への配慮もあって新しいビルを物色する動きが強く、新築ビルの空室率は17.15%と3.28ポイント下がった。同社は「来年春の移転を検討するテナントの動きがさらに活発となる可能性がある」(飯嶋清社長)とみている。
東京では千代田区などで比較的大規模な成約があり、空室が減っている。同区の空室率は前月比0.14ポイント低い7.73%だった。東京以外では、大阪の空室率が11.49%と0.13ポイント低下し、名古屋も11.91%と0.23ポイント下がった。仙台は0.37ポイント低い16.05%だった。
森ビルによると、11年の都心3区(千代田、中央、港)のオフィスビル供給面積は51万平方メートル。12年は88万平方メートルと約7割増えるが、03年(181万平方メートル)や06年(105万平方メートル)に比べると低水準。需給面でみる限り、先行きの供給圧力はさほど強くない。
空室率の改善にもかかわらず、賃料は下がり続けている。三鬼商事がまとめた東京都心5区の8月末の平均募集賃料(共益費含まず)は3.3平方メートル当たり1万7136円と、前月比で89円(0.5%)下がった。賃料の下落は36カ月連続だ。
空室率低下に賃料上昇が重なればオフィス市況の本格回復といえるが、賃料上昇にはまだ時間がかかるとの見方が多い。「千代田区大手町や丸の内周辺の賃料の反発は来春になるのではないか」(みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリスト)
これまでも空室率低下から賃料上昇まで半年から1年ほどかかった例が多い。03年の市況回復局面では、三鬼商事の集計する空室率が低下し始めたのは9月だったが、賃料が本格的な上昇軌道に乗ったのは翌年11月からで1年以上遅れた。
空室率と賃料のタイムラグを生み出しているのはビルオーナーの心理。オーナーは空室を埋めるのを優先するため、市況回復局面でも賃料の引き上げは後回しとなる。
ビルオーナーがテナントに対し、入居から半年間など一定期間の賃料を免除するフリーレントの事例も依然として多い。実質的な賃料の上昇はさらに先となりそうだ。
2011年09月09日 日本経済新聞
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