会社のしくみ-安心確実な会社設立を-
会社のしくみ
「会社法」が生み出した新しい流れ
◇「会社法」の施行が、起業促進の追い風に
日本に「会社法」が施行されたのは、2006年5月。
それまで商法をはじめ、会社形態ごとに分散していた法律が一本化されただけでなく、起業の促進を図る目的で、
会社設立における各種規制も大幅に緩和されました。
それまで最低1000万円以上必要だった資本金の制度が撤廃されたり、取締役の必要人数が1人以上、
つまりたった1人でも株式会社が作れるようになったりと、事前に資金や人員を用意する手間が省けたことで、
新規設立におけるハードルは相当低くなったとされています。
◇「会社法」施行による、旧法からの主な変更点
●最低資本金制度の撤廃
最低資本金制度(株式会社:1000万円以上、有限会社:300万円以上)の撤廃
法律の本質は「制度の撤廃」なのですが、現状では「最低資本金が1円以上に変更された」という解釈が
一般的となっています。
『1円起業』という言葉が生まれるきっかけにもなった変更点です。
●「類似商号調査」の省略
かつては同じ市区町村内において、同じ営業目的を持つ企業と同じあるいは類似の商号は登記できないという規制がありました。
このため、設立手続きの際には法務局において、同一・類似称号の有無を調べる「類似商号調査」が行われていたのですが、
相当な時間を要する調査であったがゆえに、設立の手続きを長引かせる原因ともなっていました。
「類似商号調査」が省略されることで、手続きが簡略化されるメリットは生じますが、他社と同じあるいはよく似た商号を
用いること自体、訴訟などのトラブルに発展する原因になりますので、手続きを行う側の任意による調査は不可欠といえます。
●「金融機関による払込金保管証明書」が不要(一部を除く)
代表者が作成する払込証明書と、当該の預金通帳(コピー)があれば良いことになりました。
●株式会社の設立に必要な役員の人数
株式会社の設立に必要な役員の人数が、「取締役3名以上、監査役1名以上」から「取締役1名以上」に改定されました。
これにより、経営者自身が取締役となって、社員1人の株式会社を設立することも可能となります。
●株式会社と有限会社を統合し、1つの会社類型(株式会社)とする
上記の各種規制緩和に伴い、株式会社における最低限の設立条件が、従来の有限会社並みに引き下げられたことによる措置です。
これにより法制定以降、有限会社の新規設立ができなくなりました。
また既存の有限会社については、法律上は株式会社でありながら、引き続き有限会社の商号を名乗ることができる
「特例有限会社」へと自動的に移行されます。
通常の株式会社への移行も可能ですが、この場合は「特例有限会社の解散→株式会社への移行登記」という手続き上の段取りが
必要となります。
●合同会社(日本版LLC)を、新たな組織形態として制定
設立しやすくなった株式会社よりもさらに手続き上の手間、および経済的な負担が少なく済む形態として、
有限会社に代わる形での普及が注目されています。詳しくは[会社(法人)の種類]および
[「株式会社」? それとも「合同会社」?]をお読みください。
個人事業主と会社設立、どちらが得?
それぞれにメリット・デメリットがあって、特徴も大きく違いますが、本人の起業意欲や長期的視野といった観点からみれば、
社会的信用や税負担の優遇などを考えても会社の設立を選ぶのがベターといえます。
しかし一部業態においては個人事業主が適するケースもあります。
個人事業主 | 会社(法人) | |
---|---|---|
設立までの手続き 設立後の管理業務 |
簡単・低コスト (事業の変更も容易に行える |
煩雑・コストもかかる (申請に多くの書類を要する) |
社会的信用 | 低い (資金調達が難しくなる) |
比較的高い (資金調達・人材募集がしやすい) |
保険・年金 | 国民健康保険・国民年金 (負担大) |
社会保険など・厚生年金 (負担小) |
社員責任 | 無限責任 (全債務を1人で負うリスク) |
有限責任 (株式会社、合同会社の場合) |
税金負担 | 全般に優遇は少ない | 軽減されやすい |
業務スタイル・志向 | 社外依存が小さい 1人で行える仕事 など |
事業拡大を視野に入れている 経営意識が強い など |
会社(法人)の種類
会社法の施行によって、有限会社が株式会社の一種として扱われるようになったことから、現在法人と呼ばれるものについては「株式会社・合名会社・合資会社・合同会社」の4種類となります。
それぞれにしくみの違いはありますが、最も重要なのは、出資者の責任が有限責任なのか、無限責任なのか」という点になるでしょう。
【株式会社】
自社の株式を発行して出資を募る形態の会社。出資者はもちろん、株式を購入する株主です。
債務に対する出資者の責任範囲は「出資金額内の有限責任」、つまり出資額を超えて負担する必要のない立場となります。
株式会社においては、出資者を株主、会社の設立手続きを行った株主を発起人、会社経営を行う人を取締役、会社の代表を代表取締役と呼びます。
株式会社には「非公開会社」と「公開会社」の2種類があります。
非公開会社の場合は通常、発行する全ての株式に譲渡制限が付くため、一般の株主は購入ができません(一部例外あり)。
よって証券市場へ上場するためには、公開会社となる必要があります。
どちらの場合も最高意思決定機関である株主総会を開く必要はありますが、公開会社については社内に取締役会や監査役を置くなどの義務が発生します。
中小の株式会社については、その大多数が非公開会社です。
公開会社への転換はイコール上場を意味することになりますので、会社の組織や規模がそれなりに大きく、またしっかりしたものでなければ難しいのです。
多くの場合、「信頼関係を持った少数の出資者によって成り立っている」というのが設立直後の環境といえるでしょう。
なるべく低リスクで会社を興したいのであれば、「株式非公開・取締役1名・取締役会なし・監査役なし」という形態で起業するのが適当といえます。
【合名会社】
無限責任社員のみが出資して成り立つ会社です。
少人数でかつ極めて信頼関係の強い人達によって設立される形態で、現在では家族経営の会社など、その数はごくわずかに限られています。
手続きが簡素で取締役の設置も不要という特長はありますが、有限責任と違って無限責任の場合は、債務の支払額に制限がつかないので、万が一の時は私財を充ててでも完済しなければなりません。
よって一般的には、リスクの大きい形態といえるでしょう。
【合資会社】
合名会社が「無限責任社員のみ」なのに対して、合資会社は無限責任社員と有限責任社員の両方が属する会社となります。
主に酒造会社などにおいて、多く見られる形態です。
合名会社と同様に手続きが簡単なことから、会社法ができるまでは合資会社として起業を目指す人が増えた時期もありましたが、現在、一般的な需要はほとんど見られません。
【合同会社】
会社法によって新しく設けられた形態で、アメリカにおいてベンチャー企業の受け皿的な組織体として活用されているLLC(Limited Liability Company)をモデルに作られたことから「日本版LLC」という別称で呼ばれています。
株式会社と同じく社員1人でも設立が可能です。
詳しくは次項の[「株式会社」? それとも「合同会社」?]で触れることにします。
合名会社や合資会社の存在はごく一部の業界や業態に限られるため、新規での設立ケースはきわめて稀となりました。
もともとの数についても少ないことから、国内の企業(法人)は、株式会社と特例有限会社でほぼ占められている現状となっています。
新しい企業概念として国内での設立が認められた合同会社が、従来の有限会社に代わって普及するかどうかに注目が集まっています。
株式会社と比べて何が違うのか、運営に際してどのような長所・短所があるのかを、次項で述べていきます。
「株式会社」? それとも「合同会社」?
会社法の施行以降、有限会社の概念がなくなり、株式会社としての設立が容易かつ一般的となったことで、「新規設立の形態は株式会社で」という、起業における1つのパターンが出来上がったように見えます。
しかしその一方で、利便性やメリットの多さが注目されている「合同会社」が国内で新たに認められ、特に小規模経営から会社をスタートさせる起業家やベンチャー系の新規設立においては、株式会社に加えてのもう1つの選択肢として考慮する価値を持った形態がこれから増えていく可能性も考えられています。
新しく設けられた合同会社は、パートナーシップの観点から企業経営の概念が構築され、2000年以降、アメリカから欧州各国へと手法が伝播していったLLC(Limited Liability Company/リミテッド・ライアビリティ・カンパニー)をモデルに作られたことから「日本版LLC」という別称で呼ばれています。LLP(有限責任事業組合)と違って法人格となりますので、業務に対する報酬(給料)の受け取りも可能です。
合同会社の主な特徴ですが、
設立形態を選ぶにおいては当然気になる「株式会社との比較」を踏まえて紹介していきます。
◆会社の区分
持分会社
※合名会社、合資会社と同じ枠組みになります。
株式を発行しない会社となりますので、出資者の権利は「持分」と呼ばれます。
◆出資者
1名以上(株式会社と同じです)
◆社員の責任範囲
有限責任(株式会社と同じ。出資金額内の責任となります)。
◆役員の最低必要人数
なし (取締役、監査役、取締役会のいずれも設置不要)
社員1人でも設立可能なのは株式会社と同じですが、合同会社については取締役も含めて役員を置く必要がありません。よって取締役会も開かなくていいことになります。
◆最高意思決定機関
社員全員の同意
合同会社は株主総会を開く必要がありませんので、出資者である社員間の決定が、社内における最高の意思決定となります。
◆社員(株主)に対する権利
原則的に自由(会社の定款に基づいて行われる)
株式会社の場合、原則的に全ての株主は平等であるとされていますが、合同会社については社員の出資比率に関係なく、利益や権限の配分が自由に行えます。
◆設立手続き
※定款の作成および認証
株式会社は3通必要ですが、合同会社は2通で構いません。
また合同会社は、公証役場で認証を受ける必要がありません。
よって認証に関する手続き、および手数料の支払いが不要となります。
※取締役、監査役に関する決定、調査、各書類の作成
合同会社には株式、そして役員規定がありませんので、
「発起人会の開催および議事録の作成、提出」
「設立時発行株式に関する発起人同意書の提出」
「設立時における取締役、代表取締役、監査役の就任承諾書の提出」
などについては不要となります。
◆設立費用
オンライン会社設立サポートサービス
「ひとりでできるもん」では、通常行政書士や司法書士が行う作業を全てインターネットを介したプログラムが行います。
その為、人的費用が大幅に異なることから、税理士事務所などに比べて安価に提供することができます。
さらに、当システムでは電子定款認証に対応しておりますので、お申し込み頂いた場合は印紙代4万円が不要になり、自分自身で会社設立するよりも費用を安くすることができます。
専門家に 依頼した場合 |
自分で 設立した場合 |
サイトを使い 設立した場合 |
|
---|---|---|---|
登録免許税 | 150,000円 | 150,000円 | 150,000円 |
定款認証料 | 50,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
電子定款 謄本代 |
2,000円 | 2,000円 | 2,000円 |
印紙代 | 0円 | 40,000円 | 0円 |
専門家手数料 | 30,000~100,000円 | 0円 | 7,350円 |
電子定款 認証料 |
10,000~30,000円 | 0円 | 5,000円 |
トータル費用 | 242,000~332,000円 | 242,000円 | 214,350円 |
◆その他
合同会社の場合、出資者は「社員」と呼びます(株式会社は「株主」)。
合同会社は全ての出資者が業務執行権限を有します。
合同会社は株式会社のような「決算公告」を行う必要がありません。
以上の通り、合同会社は、出資者責任の面では株式会社の長所、そして手続きの簡便さや会社としての自由度という面では合名会社と合資会社の長所をそれぞれ取り入れた形態といえます。
日本における合同会社の認知度が低いというネックが、会社としての信用度にどう影響するのかという懸念はありますが、個人事業主が法人設立を考える上において、株式会社までの枠組みは要らないと思っている人にとっては最適な設立手段であるといえるでしょう。
株式会社と合同会社、どちらの形態が適しているかは会社の規模や事業内容、将来的な計画など多項目から判断すべきこととなりますが、合同会社からスタートして、ある程度経営が波に乗ったところで株式会社にスイッチするという手段もあります。
1人あるいは少人数からの出発であれば、最初はなるべくリスクの小さい選択を心掛けることも得策といえますので、しっかり考えましょう。
最近では、合同会社としての設立支援や、合名会社および合資会社からの変更手続きサポート、さらには合同会社から株式会社へ変更する際の手続きサポートについてもサービスに盛り込む税理士事務所が増えているようです。
顧問税理士と契約する際にも、こうしたサポートの幅や専門性については検討材料に入れておくことをお奨めします。
■(まとめ)合同会社のメリット・デメリット■
【主なメリット】
株式会社と同様に、1人での起業が可能。責任は「有限責任」
設立の初期費用が、株式会社に比べて安く済む
手続きにおいて、提出を必要とする書類の数が少ない
取締役、監査役の設置が不要。持分会社なので株主総会や決算公告も不要
社員に対する利益や権限の配分を自由に行える
【主なデメリット】
日本での知名度が低いことによる社会的信用への懸念(資金調達の際など)
株式上場など、会社としての目標やステップアップの基準を置きにくい
代表者の肩書きは、取締役ではなく「代表社員」となる
【こんな起業家には「合同会社」が向いている!】
◎税金対策上、形だけでも法人化しておきたい
◎開業時に資金面や手続きの負担をできるだけ抑えたい
◎将来的に株式会社への転換を見据えた上での、準備期間として活用したい