[FT]日本の地味な新首相(社説)
(2011年8月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
野田佳彦氏が30日、小泉純一郎氏の退任以来、5年間で6人目の日本の首相に就く。表向きは菅直人氏が辞任したが、与党の民主党が就任からわずか1年余りで菅氏をお払い箱にして、29日に野田氏を党代表に選んだからだ。
野田氏はあまり高い期待を持たせることはなかった。代表選の投票直前の演説では、自分は金魚のように派手ではなく、むしろドジョウに近いとして、水底の魚のように日本の「泥臭い政治」の中を汗をかいて前進していくと語った。
■「選挙で選ばれた」のは鳩山氏だけ
「泥臭い」という言葉は的を射ている。日本人は国の方向性を示してくれる強い指導者を求めているという。だが指導者を選んですぐに追い出す政治プロセスは、透明性とはまるでかけ離れている。
過去6人の首相のうち、総選挙で選ばれたといえるのは、民主党の哀れな指導者、鳩山由紀夫氏だけだ。残る5人は皆、党内の体制刷新で首相になった。この点を浮き彫りにするかのように、今回、国民の人気が圧倒的に高かった前原誠司氏は、党内の選挙では3位につけるのがやっとだった。
議院内閣制を敷くほかの国でも、首相は常に国民の手で選ばれるわけではない。英国では2007年に、労働党の議員の投票によってゴードン・ブラウン氏がトニー・ブレア氏の後継首相になった。だが日本では、そうした不透明なプロセスが常態化している。これは民主主義と説明責任を害する行為だ。
責任の一端は国民にある。世論調査では、各首相は国民から高い支持を得てスタートを切る。だが数カ月もすると、国民は飽きてしまい、与党は選挙の重荷と見なすようになった指導者をお払い箱にしなければならないと感じるようになる。
■国民自身にも忍耐力が必要
もし国民が指導者に成熟さを求めるのであれば、国民自身がもっと忍耐力を身につけなければならない。政党は調査方法が疑わしいとされる世論調査の気まぐれな動きを無視すべきで、物事を達成できるだけの時間を指導者に与える必要がある。
国民の信任の有無にかかわらず、近年の日本の首相はパッとしなかった。プロが集まる強力な官僚機構のおかげで、国は今もかなりうまく運営されているが、戦略的には漂流している。津波の後、どう復興するのか、債務をどう管理するのか、デフレをいかに根絶するのか、中国にどう対処するのかといった大きな問題は、先送りされたり、ごまかされたりしてきた。
だが、悲観論者は落胆することになるだろう。日本は悲観論者の最悪の予想を覆すくらいに安定している。しかし、それは政治のおかげではなく、政治の茶番劇にもかかわらず、そうした状況が保たれているのだ。日本がもっとうまくやっていくためには、政治の安定がどうしても必要だ。
2011年08月31日 日本経済新聞
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