水戸納豆ピンチ!観光客減、稲わら汚染、風評の三重苦
稲わらで納豆を覆った伝統の製法を守る水戸市の「わらづと納豆」が窮地に立たされている。土産物としての需要が最も大きく、震災後の観光客減少が直撃。牛の餌の稲わらから暫定基準値を超える放射性物質が検出されたことで風評被害も重なり、製造業者は頭を抱えている。
「このままだと来春まで商売を続けられない」。8月初め、茨城県納豆商工業協同組合水戸支部の会合で、水戸市内5社の経営者らが不安を口にした。前年の4割まで売り上げが減った社もあり、組合全体の被害額は億単位に上るという。同支部は9月、東京電力に賠償請求する方針。
スーパーなどで主流の発泡スチロール製容器に入った納豆は、大手の製造会社が中心で、事業規模が小さい地元5社は高級志向などに応える商品が主力。手間がかかるわらづと納豆のターゲットは県外中心の観光客だ。
そのため売り上げは観光客数に比例し、例年は偕楽園(水戸市)の観梅シーズンの3月と夏休みの8月がピーク。だが、今年は3月に大震災が発生し、今夏は福島第1原発事故の影響もあり、観光客が激減している。
さらに、7月に牛の餌の稲わらから暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されたことも追い打ちをかけた。消費者から「納豆のわらは安全か」との問い合わせが相次ぎ、同組合は材料の稲わらを自主的に検査。結果は不検出だったが、風評被害は深刻だ。
5社のうち、だるま食品は生産量を減らすため製造ラインを月に8日間はストップ。社長の高野正巳さんは「本来は工場はフル稼働で書き入れ時なんだけど…。1年の大部分を8月に売り上げるので大打撃だ」とため息をつく。
12年前に茨城県東海村の核燃料加工会社「ジェー・シー・オー(JCO)」で起きた臨界事故でも売り上げが落ちたことを思い出す高野さん。「あのときは2カ月で売り上げは元に戻った。今度は先が見えない」と危機感を隠せないでいる。
2011年08月22日 ZAKZAK
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