[FT]震災の決算への影響で明暗、予想外の好調企業も
(2011年8月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
東日本大震災と津波は、国内外の多数の企業の収益を直撃する一方、これを機に新たな事業機会を得た企業も多かったことが各社の決算結果から明らかになった。
日本とアジア諸国で差
今年4~6月期の決算結果を前年同期と比較するとアジアの企業が震災と津波で被った影響の度合いが全面的に見えてくる。それによると、最終製品とサプライチェーン(供給網)への影響が甚大だった日本と、さほどではなかったアジア諸国との間に際だった相違があった。
特に注目されるのは、サプライチェーンの寸断が日本以外のアジア諸国に与えた影響が、震災直後に懸念されたよりかなり軽微にとどまったことだ。震災は、大半の企業の第1四半期である1~3月期終了の3週間前に発生した。各企業は日本製部品への依存度が高かったことから、当初は、製造業が世界的に生産停止に追い込まれることが懸念された。
被害が最も甚大だったのはホンダ、トヨタ、日産といった自動車メーカーや、ソニー、任天堂、パナソニック、東芝、シャープ、富士通といったエレクトロニクスや通信分野の日本の製造業だった。経営再建中の日本航空や日本とスウェーデンの合弁会社の英ソニー・エリクソンも影響を受けたとしている。
日本で本格的に事業を展開する外資系企業のうち米建機大手キャタピラーや米飲料大手コカ・コーラ、シンガポールの物流大手、グローバル・ロジスティック・プロパティーズ(GLP)なども収益に影響が出たとする決算を発表した。特にGLPは、4~6月期の純利益が2.3%増加したものの、震災という特殊事情がなければ、上昇率は10%に達したと見ている。
しかし7~9月期決算では、大半の企業が震災の影響は消滅するか大幅に緩和されると予測する。富士通の山本正已社長は、震災がもたらした「原材料と部品の調達に対する影響はほとんど緩和された」と語る。
■震災の影響で好決算も
他方で、震災による状況変化で新たな市場機会が生まれたことなどから予想外の好決算となった企業もある。傘下の起亜自動車の売上高を含めると世界第5位の韓国の現代自動車は、日本の自動車会社の生産停止が追い風となり純利益が37%増ともっとも恩恵を受けた。
コマツと日立建機も純利益を大きく伸ばした。
タイの海産物輸出大手、タイ・ユニオン・フローズン・プロダクツ(TUF)の純利益は42%増加した。震災後、日本でエビなどの海産物が不足したことも一因だ。
■半導体や液晶は供給過剰に
台湾のハイテク各社は、サプライチェーン寸断とは別の理由から業績が落ち込んだ。サプライチェーンは震災後もおおむね持ちこたえたものの、欧米の景気停滞で、大量にストックしていた部品の在庫がさばけなかった。
台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング、南亜科技と華亜科技などの台湾企業に加え、韓国・ハイニックス半導体も業績を大きく悪化させた。
薄型パネルの友達光電(AUO)は、前年同期に純利益を計上したが、供給過剰の影響で4~6月期は赤字に転落した。韓国のLG電子も、薄型テレビの不振から純利益が前年同期と比べ87%減少した。
韓国のサムスン電子は携帯電話事業が好調だったものの純利益は18%減少した。半導体と液晶ディスプレーの不振が、成長するスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)事業に影を落とした。
スマホ生産アジア第2位である台湾の宏達国際電子(HTC)は、第2四半期の純利益が前年同期比2倍超の過去最高となった。
■航空会社は燃料高で打撃
韓国の航空大手、大韓航空やアシアナ航空も震災の影響を被り、営業損失を計上した。最大の業績悪化要因は燃料高で、香港のキャセイ・パシフィック航空は59%、シンガポール航空は82%、それぞれ純利益を減少させた。
しばしば地域景気の先行指標とされる商品生産者とトレーダーはおおむね好調な決算だったが、アナリストは、商品価格の低下で前途には暗雲が漂うと指摘する。
2011年08月22日 日本経済新聞
最適な税理士が見つかる!
T-SHIEN税理士マッチング
依頼したい税理士業務と希望金額を入力し、匿名で全国の税理士事務所から見積を集めることができるシステムです。送られてきた見積の中から、最適な税理士を選ぶことができます。