スマートフォン成長の陰で、低迷続く単一機能の携帯型電子機器
米国の市場調査会社であるIHS iSuppliは、「現在、タブレット端末やスマートフォンといった多機能の携帯型電子機器の売上高が急激に伸びているが、これは、単一機能の携帯型民生機器の需要を犠牲にした上で実現している」と指摘する。同社によれば、MP3プレーヤやデジタルスチルカメラといった単一機能の民生機器の売上高は、今後、少なくとも2015年までは低迷が続く見込みだという。
IHS iSuppliは、「スマートフォンとタブレット端末の出荷台数は、2010~2015年にかけて、それぞれ28.5%と72.1%の年平均成長率(CAGR)で成長する」という。一方、簡易型ナビゲーション機器(PND:Portable Navigation Device)や携帯型メディアプレーヤ、デジタルスチルカメラなどの同期間における出荷台数は、いずれも減少、あるいは横ばいになるとみられている。
スマートフォンに内蔵されている機能は、整理統合が進むとかねてから予想されてきたが、こうした傾向はすでに携帯型民生機器市場に大きな影響を及ぼしている。例えば、ネットワーク機器の大手メーカーであるCisco Systemsは2011年初めに、「一般消費者向けの携帯型ビデオカメラ『Flip』の事業から撤退する」と発表した。この時、アナリストなど業界観測筋の多くは、その要因の1つとして、スマートフォンに搭載されるビデオ機能が向上したためだと指摘している。
IHS iSuppliのコンシューマプラットフォーム部門で主席アナリストを務めるJordan Selburn氏は、発表資料の中で、「多機能化された電子機器は、単一機能に特化した機器を犠牲にした上で成長を遂げており、電子機器業界の今後の展望を変える勢いをみせている」と述べる。
同氏は、「タブレット端末が登場したことで、単一機能の機器の売上高にはさらなるプレッシャーがかかる」と指摘する。タブレット端末は、電子書籍リーダーや音楽プレーヤ、ビデオプレーヤ、ゲームプラットフォーム、PND、カメラといった多彩な機能を、1台の機器で提供することができるからだ。タブレット端末市場では、Appleの「iPad」が今なお、圧倒的な優勢を維持している。
さらにSelburn氏は、「民生機器市場は、適者生存の状況が続いている。タブレット端末などの多機能な電子機器は、昨日までは最先端とされていた民生機器を、明日には時代遅れなものに変えてしまうほどの力を持っている」と語った。
2011年08月04日 ITメディア
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