世界で格付け会社設立が広がるワケ
2007年のサブプライム問題、08年のリーマン・ショックから抜け出せない世界経済は今、まさに米国の債務上限問題、欧州のソブリン危機に直面している。そうした中、欧州を中心に「新たな格付け会社」設立の動きが急浮上している。
「格付け会社の影響力を抑制しなければならないと私は以前から言ってきた。(ムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ、フィッチ・レーティングスの)格付け大手3社の独占的な支配を切り崩す」
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスが7月5日、ポルトガルの信用格付けをジャンク級(投資不適格)に引き下げたことに対し、ドイツのショイブレ財務相は、こう語気を荒らげた。
また、欧州委員会のバローゾ委員長も「ムーディーズの(ポルトガル)格下げは透明性を向上させない。むしろ投機的要素を加えるものだ。欧州に格付け機関が1社もないのも奇妙だ。欧州に特有な問題を評価するに当たり、ある種のバイアスが市場にあるように見受けられる」と続いた。
PIGSに代表される南欧諸国の財政・金融危機に苦悩する欧州において、大手格付け3社は「投機筋を暗躍させる鬼っ子」のような存在と映る。「一民間会社にすぎない格付け会社に、なぜ、欧州経済が翻弄させられなければならないのか。これでは米格付け会社の手の上で踊らされているようなものだ」(欧州委員会首脳)との不満は根強い。ならば、いっそ欧州独自の格付け会社を創り、欧州の格付けを一本化してはどうかという提案である。欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁も欧州議会で、欧州独自の格付け会社設立の必要性に言及した。
欧州の反発は隣国ロシアにも波及している。ロシアを中心とするユーラシア経済共同体は、米格付け会社による独占状態の緩和を目指し、来年にも独自の格付け会社の設立を検討している。プーチン首相は7月13日、格付け会社設立の計画を「強く支持する」と語り、「現在のロシアの格付けには憤慨している。企業の借り入れコストとリスクの上昇につながっている」と指摘した。
欧州での格付け会社批判の根底には「そもそも格付け会社は、サブプライム問題の原因を作った当事者ではないか」との思いがある。証券化商品の発行体と癒着して甘い格付けを行い、欧州にサブプライムローンという不良品をまき散らしたとの批判である。
だが、欧州が独自の格付け会社の設立に動く本音は、危機が深刻化しかねない欧州の財政問題に対する予防線であろう。格付け大手3社によるPIGS格下げの影響と投機資金の動きを封じ込めたいとの狙いがあると思われる。欧州の市場防衛のために米系大手3社と競合しうる格付け会社が必要というわけだ。
興味深いことに、中国はいち早く独自の格付け会社「大公国際資信評価」を設立し、1年前にソブリン格付けを発表した。すでに米国債を最高格付けから外している。格付け会社の基本は国家から独立した中立的な民間企業である。しかし、その実態は限りなく政治的要素をはらんでいる。
2011年08月03日 ZAKZAK
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