最高裁/建築訴訟迅速化へ報告書/契約書作成の徹底必要、専門家との連携強化も
最高裁判所は、長期化する建築関係訴訟を迅速化するための改善策をまとめた。学識者や弁護士らで構成する検討会の議論などを踏まえ、契約書などの書面作成に関する業界慣行の改善や、司法と専門家団体との連携強化などの施策を提示。建築関係訴訟に関する専門委員の確保・充実や、弁護士のサポート態勢の整備などを検討事項に挙げた。引き続き検討を重ね、社会的要因も含めて裁判を迅速化するための施策を打ち出していく考えだ。
最高裁の調べでは、10年に終結した建築関係訴訟の平均審理期間は17・5カ月。中でも瑕疵(かし)主張のある訴訟の平均審理期間は24・9カ月と長く、審理期間が2年を超える事件の割合も39・2%と高い。民事一審訴訟の平均6・8カ月と比べても建築関係訴訟は審理期間が長く、原告と被告の双方に過大な経済的・精神的負担を強いているのが現状という。
最高裁は09年7月にまとめた3回目の報告書で、長期化の要因として、▽専門的知見の不足による争点整理の長期化▽争点多数▽客観的証拠の不足▽鑑定の長期化▽感情的対立―の5点を指摘。これらを改善するため、「裁判の迅速化に係る検証に関する検討会」での議論や裁判官や弁護士などからの意見聴取を踏まえて今回、4回目の報告書を作成した。報告書では、改善策として、▽合意内容の書面化に向けた業界慣行の改善▽鑑定人となることにインセンティブを与える制度の導入▽研究機関による鑑定を積極的に活用できるような環境整備▽各地域の地裁レベルでの裁判所と日本建築学会などの専門家団体の連携強化―などの8項目を挙げた。
このうち書面化については、取引の実情に十分目を向けつつ、当事者間の合意内容などを証明する書面作成を義務化するなど業界慣行の改善を求めた。最高裁は「契約書がないために紛争が長期化する事件が非常に多い。書面化が進めば、建築関係訴訟の審理期間が劇的に変わる」(事務総局民事局)としている。建築関係訴訟は専門委員の関与率が高い。現在、建築関係の専門委員は567人(うち東京地裁は77人)だが、構造や意匠、設備など具体的な事案に適した専門家が不足しているという。さまざまな専門分野の人材の確保・充実とともに、地域で地裁と専門家集団との連携を強化することも盛り込まれた。
2011年08月03日 日刊建築工業新聞
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