[FT]中国企業の買収攻勢に門戸開く「日本株式会社」
(2011年8月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
日本の産業界が中国の投資家に対し長年抱いていた疑心暗鬼の念が薄らいできた。中国企業による日本企業の買収が今年に入り金額ベースで急増している。
■対日直接投資が前年全体の4倍超に
パナソニックは先週、子会社の三洋電機が手掛けている洗濯機や冷蔵庫など白物家電事業を、中国家電大手の海爾集団(ハイアール)に売却することで合意した。米調査会社ディールロジックによると、今回の合意によって中国企業の対日直接投資額は、7月末の時点で昨年全体の実績の4倍超にあたる5億7550万ドルに達した。
日本企業の幹部はこれまで、野心的で資金の豊富な中国企業は、業績が低迷する日本企業から先端技術をはじめとする資産を略奪し、日本の相対的な経済的没落を加速させる脅威だと見なす傾向が強かった。
経団連の米倉弘昌会長は、中国企業による急激な日本企業買収の動きは、「国民の間に突発的な不安や恐怖を引き起こす可能性がある」と述べた。
しかし、少なくとも一部の日本企業は中国企業の直接投資の拡大を、重荷となった旧来の事業部門を切り離し、リストラを加速させる良い機会という新たな視点で捉え始めている。
パナソニックは、充電池や太陽光パネルなど三洋電機の先進的な「グリーン」事業に着目し、2009年に同社を買収したが、相対的に付加価値の低い冷蔵庫・洗濯機事業部門にはほとんど重きを置かなかった。
■エレクトロニクス分野で今後顕著に
ハイアールの三洋電機買収合意に先立ち、今年前半にはレノボ・グループ(聯想集団)とNECがパソコンの合弁会社を設立することで合意。レノボは最終的にNECのパソコン事業全体を買収する選択肢も手に入れた。
同様の売却例は、最近では、太陽光パネルから衣料品、ゴルフクラブなど、様々な分野で見られる。
しかし全体の投資額はまだ少なく、中国の投資家に対する日本企業の全面的な門戸開放には時間がかかりそうだ。日本企業は業績低迷部門を売却する際の決断の遅さで悪名高い。「特に中国企業に対してその傾向が顕著だ」と東京の銀行関係者は指摘する。
しかし、こうした買収例が今後増えていく可能性は高い。とりわけエレクトロニクス業界では顕著だろう。日本企業が体質をスリム化し特定事業分野に集中しようとしているのに対し、中国側は世界に通用するノウハウと日本企業の持つブランド力を手に入れようとしているからだ。
■日本の顧客や販売ネットワークが魅力
中国企業の多くは、目の肥えた日本の消費者を顧客として獲得することを、高級志向の強い成熟市場の制覇に向けた重要なステップと見ている。中国側に同様に魅力的なのは、日本企業が数十年かけて築き上げた国際的な販売ネットワークだ。例えば、三洋電機の白物家電の市場シェアは成長著しい東南アジアのそれが国内を上回る。
経済団体などの警告にもかかわらず、日本国民は中国企業による日本企業買収を冷静に受け止めつつあるように見える。インターネットを見る限り、三洋電機の白物家電事業売却のニュースを巡る国民の最大の関心事は、同社のヒット商品、家庭用パン焼き器「GOPAN(ゴパン)」がハイアール傘下に入るかどうかだった。ちなみに、同事業は売却されない。
2011年08月01日 日本経済新聞
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