埼玉県内のM&A、11年上半期は3件増の15件 5年ぶりに増加
埼玉県内に本拠を置く企業がかかわるM&A(合併・買収)件数の減少傾向に歯止めがかかった。2011年1~6月のM&Aは前年同期に比べ3件増の15件と、上半期ベースで5年ぶりに増加に転じた。投資会社の出資や事業譲渡などで海外展開を進めようとする県内企業が増えた。円高や電力不足の影響が長引く恐れがあり、海外進出をにらんだM&Aが今後増えるとの見方も出ている。
M&Aは資本参加や事業譲渡などを含み、M&A助言のレコフ(東京・千代田)が公表などによる判明日ベースで集計した。全国のM&Aの件数は822件と東日本大震災の影響で5%減ったが、震災の被害が少なかった県内ではM&Aへの影響は小さかった。
県内のM&A件数は景気拡大期だった06年上半期の36件から一転して減少し続けていた。今年上半期にM&A件数が増えたのは、これまで県内で少なかった海外市場への進出などを見据えた動きが出てきたためだ。
自動車用のプレス金型製作などを手掛ける山本製作所(東松山市)は三菱商事などが設立した投資ファンド「丸の内キャピタル」から出資を受けた。自動車業界では大手部品メーカーが相次ぎ海外の現地生産を進めている。山本製作所は単独で海外への進出を加速するには限界があると判断し、丸の内キャピタルと資本業務提携を結ぶことで商社などの人脈や情報を生かす考え。
自動車販売大手のVTホールディングス傘下で省電力装置を製造・販売するE―FOUR(さいたま市)は海外の販売代理店の1つだった英パワーパーフェクターグループに主力の事業を譲渡し、出資した。電圧が高く電力供給が不安定な海外市場での需要を見込み、販売代理店と組むことで海外市場での一段の拡販を狙う。
一方、国内では事業拡大や再編のM&Aが目立った。食品スーパーのマミーマートは3月下旬、子会社でディスカウントストアを運営するギガ物産(ふじみ野市)を大黒流通チェーン(東京・荒川)に売却。同じく低価格路線を進めるマミーマートの店舗に経営資源を集中させて事業の拡大を狙う。
昨年のエコカー補助金の打ち切り以降、新車販売が前年同月を下回る傾向が続いている自動車業界では、県南部や東部を中心に店舗を展開するディーラーのネッツトヨタ東埼玉(川口市)が県北や西部に多く店舗を持つネッツトヨタウエスト埼玉(鴻巣市)を4月に買収。ディーラー再編の動きがみられる。
今後のM&Aの傾向について、埼玉りそな産業経済振興財団の井上博夫主席研究員は「円高や電力の制限という国内経済の逆風環境を考慮すると、海外進出などを見据えたM&Aが増えそうだ」とみている。
2011年07月22日 日本経済新聞
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