円78円台、“6重苦”の日本企業に残された道は日本脱出?
14日の東京外国為替市場で、円相場は一段と円高が進み、4カ月ぶりに1ドル=78円台後半に達した。海外経済の構造的な問題を反映している今回の円高は、長期にわたるとの見方が少なくない。想定以上の円高は東日本大震災の被害から立ち直りつつある日本企業の競争力を根こそぎ奪う。原発再稼働問題での政府の場当たり的な対応もあって、日本企業は“6重苦”に苦しんでおり、“日本脱出”がいよいよ現実味を帯びてきた。
「追加の政策支援が必要になるだろう」。この日の円高は、米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長の発言が引き金となった。バーナンキ議長が米景気について「回復は続いているものの、ペースは緩やかだ」と景気回復のもたつきを認めたことで、追加金融緩和観測から一気に円買いドル売りが進んだ。
前日はギリシャなどの財政危機が、経済規模の大きいイタリアやスペインに波及するとの見方が広がり、ユーロを売る動きが加速したことで円高が進んだ。米欧の経済、財政問題に端を発した円高だけに、今回の円高は簡単には終息しそうもない。
もともと日本勢は海外勢と競争する上で税制・労働法制などの面で不利を強いられてきた。だが、日本経済を支えてきた輸出企業にとっては、「円高が最も厳しい」(日本自動車工業会の志賀俊之会長)。13日に国内生産拠点の再編策を発表したトヨタ自動車の豊田章男社長は、「石にかじりついてでも日本でのものづくりに取り組む」と話したが、その言葉からは悲壮感さえ漂う。
さらに政府の場当たり的な対応で、この夏は電力供給不安も加わり、日本企業はまさに“6重苦”。菅直人首相は13日の会見で「(国民の)節電の協力が得られれば、今年の夏と冬の必要な電力供給は可能だ」と述べたが、この発言を聞いたある企業の幹部は「われわれがどれだけの思いで、国内のものづくりを守ろうとしているのか、まるで分かっていない」と切り捨てた。
残る道は、いよいよ日本脱出。「1ドル=78、79円台になると、日本国内でのものづくりは非常に難しい状況になる」。オムロンの山田義仁社長が13日の会見でこう話したように、日本企業のトップも海外脱出が視野に入っていることを公然と認め始めた。政府の無策は、国内企業に、究極の選択を迫ろうとしている。
2011年07月14日 産経ニュース
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