関西疎開、あてが外れた オフィス移転、海外に軸足
東日本大震災を教訓に、リスク分散のため企業が首都圏から関西にオフィスなどを移転する動きは一時的な現象にとどまったようだ。大災害で被害が生じる可能性は関西も皆無ではなく、電力不足の懸念が全国に広がってきたことから、首都圏に戻る“疎開企業”も続出。人件費や法人税が高く、円高の逆風が吹く国内よりも、海外に拠点を分散する方向にリスク対応の軸足が移ってきている。
■震災直後は殺到も
レンタルオフィスの運営会社サーブコープジャパン(東京都新宿区)には、震災4日後の3月15日以降、外資系を中心に、首都圏にオフィスを構える企業から問い合わせが殺到。同社が大阪市内に持つビル3棟のオフィス計約100件があっという間に“疎開企業”で満室となった。しかし、時間がたつにつれて大阪を離れる企業が相次ぎ、「現在は震災前とほぼ同じ状態に戻っており、震災をきっかけに関西方面までビジネスエリアを拡大しようと残っている企業は少数派」(同社)という。
大阪市内では、JRや私鉄のターミナルが集中する梅田地区などの都市再開発に伴い、オフィスの供給過剰が続いている。オフィス仲介大手の三鬼商事によると、大阪市内のビジネス地区のオフィス空室率は今年に入って12%前後で推移。テナントの入居が好調だった2007年の4.7%を大きく上回る。
震災後、首都圏からの本社機能の移転やオフィス拡充を期待するムードが関西のビル業界で高まったが、三鬼商事大阪支店の小畑大太(だいた)次長は「(そうした動きは)ほとんどなく、6月末でも同じ状況」と説明する。
大阪企業の東京シフトも含め、首都圏に大手企業の本社機能が集中したのは効率化を求めたためで、オフィスの移転で効率性を犠牲にしてコスト増を受け入れるには「企業も慎重にならざるを得ない」(小畑氏)というわけだ。大阪市内の貸しビル業者は「取引先も一緒に移ってくれなければ商売が成り立たない」と指摘する。
ただ、震災を機にリスク分散の意識が企業に高まったのは間違いない。NTT西日本には震災後、東日本の企業からバックアップ(予備データの保存)などの依頼が相次ぎ、契約の協議に入った案件は震災前の6倍の約200件に達した。都心型データセンタービルに注力する京阪神不動産にも「2倍の引き合いがある」(担当者)という。
■変わらないリスク
だが、関西が絶対安全だとはいえない。東海・東南海・南海地震の発生が近い将来、予想されるほか、8月までに計6基の関西電力の原子力発電所が運転停止状態になる可能性が高く、深刻な電力不足も想定される。
さらに政府が国内の全原発を対象にストレステスト(耐性検査)の実施を表明したこともあり、関電でもすべての原発が稼働できなくなれば、電力不足の長期化も懸念されている。
そんな中、地元にこだわりが強いとされる京都企業も、海外移転への関心を強めている。パソコンなどの精密小型モーターで世界シェアトップの日本電産は「本社は京都に置く」としながら、滋賀県などにあるモーターの試験設備の海外移転を検討。オムロンも災害に備え、海外にも本社機能を置く方向で検討をしているという。
リスク分散のためグローバル化が加速すれば、企業流出の新たな波が関西で起きることも考えられ、企業を誘致するどころではない事態への懸念も膨らみつつある。
2011年07月11日 産経ニュース
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