ウォール街“裏口上場”対策を強化 中国企業の粉飾続出…苦い顔
【ニューヨーク=松浦肇】米ウォール街で、現金や預金、売り上げを水増しする中国企業による会計不祥事が相次いでいる。今年3月以降、20以上の中国企業株の売買が停止処分となり、架空投資を続けていた中国企業の株をめぐり著名投資家が巨額損失を計上する事例もあった。事態を深刻にみた米証券取引委員会(SEC)や司法当局が本格調査を開始するなど、官民挙げて中国企業の不正対策に乗り出している。
「長引く金融緩和で中国株は投機対象となっていたが、粉飾決算が多すぎる。どう対応するのか」
6月6日夜、ニューヨーク市内での会合に姿を現したプリート・バハララ検事正は出席者からこんな質問を受けた。バハララ検事正はウォール街を管轄するマンハッタン地区の検事200人を統括しており、最近は著名ヘッジファンド、ガレオン・グループのインサイダー取引を検挙した。
「具体的な事件にはコメントしない」とバハララ検事正は言葉を濁したが、検察からSECまで米国の司法当局が中国企業の摘発を視野に入れているという見方が、ウォール街関係者の共通認識だ。
実際、米司法省は5月19日、日本の新興市場マザーズと米ナスダック市場に上場している香港の新華ファイナンスの幹部数人を粉飾決算やインサイダー取引の疑いで訴追したばかりだ。
北京に本拠地を置くソフト開発のロングトップ・フィナンシャル・テクノロジーズの場合、5月23日に最高財務責任者(CFO)が辞任し監査法人のデロイト・トゥーシュ・トーマツが監査をやめたことを発表した。「現金と借入残高に加えて、売り上げが不正計上された可能性があったが、経営陣に監査を妨害された」(デロイト)というのが理由で、SECが調査に乗り出した。同社株はニューヨーク証券取引所に上場しているが、いまだに売買が再開されていない。
さらに「米国の上場基準が適用されていない」(SECのジェームズ・クローカー主任会計官)と当局が問題視するのは、すでに上場している米国企業と合併する中国企業の“裏口上場”である。
2007年以降、こうした経緯で米国への上場を果たした中国企業は150件以上。このうちチャイナ・アグリテク、オリエント・ペーパー、チャイナ・メディア・エクスプレスなどが現預金を水増しするなどして不正会計疑惑を起こしている。中にはチャイナ・エレクトリック・モーターなど、株主から直接訴えられる企業も増えている。
自主規制団体の金融業界監督機関(FINRA)も動き始めた。中国系企業の米国上場にはウォール街の投資銀行が橋渡し役を担っており、引き受け責任を問う構えだ。
中国側の市場監督当局である中国証券監督管理委員会(CSRC)が数年前から上海や香港市場の上場基準を厳格化した結果、中国本土で上場できない経営基盤の脆弱な中国系企業が、中国株ブームに沸く米国を目指した側面もある。中国系企業の不正会計続出は「中国本土で駄目なら米国で」と期待したウォール街の倫理問題でもあるのだ。
2011年07月07日 産経ニュース
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