日本の太陽光発電、相次ぐ誤算 経営の速さ取り戻せ
世界一の技術を誇る日本の太陽光発電の存在感が急速に薄らいでいる。2005年、世界の太陽電池の生産量ベスト5に、シャープや京セラなど日本の総合電機メーカー4社が入る圧倒的強さを誇ったが、わずか5年後、ベスト5から4社すべてが姿を消した。代わって頭角を現したのは中国やドイツなど海外の新興企業だった。
半世紀の歴史を持つ日本の太陽電池技術は、太陽光を電気エネルギーに変える変換効率と耐久性を高めて世界トップの競争力を維持してきた。他を寄せ付けなかった日本勢が“失速”した理由は2007年、原料調達に失敗したというのが大方の見方だ。
当時、太陽電池の原料のシリコンの価格が数倍に急騰した。この局面で海外企業は臆することなく大量の資金を投入してシリコンを買い進め、市場が拡大していた欧州に製品を供給したのだ。対照的に日本企業は調達に失敗、生産を思うように伸ばせなかったとされる。シャープがドイツの新興企業「Q-Cells」に世界一の座を奪われたのも、この年だった。
シャープは当時、シリコンを薄く切って並べる主流の「結晶型」とともに、ガラスなどに膜を吹き付ける方式でシリコンの使用量を大幅に減らす「薄膜型」の生産にも力を入れ始めた。
「薄膜型は安いが、変換効率が低かった。技術で効率を上げ、安価でそこそこ変換効率が高い太陽電池を開発できると見込んだ」と業界関係者は振り返る。しかし、薄膜型の変換効率は期待するほど向上できなかったという。
シャープや京セラは「失敗」との見方を否定するが、誤算は続いた。米国の新興企業「ファースト・ソーラー」が薄膜型より安価で変換効率も高い「カドミウム・テルル薄膜型太陽電池」の開発に成功。販売を急激に伸ばし、2009年に生産量世界一に躍り出た。イタイイタイ病の原因となった重金属のカドミウムを利用する発想は、日本企業にはなかった。
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そのファースト・ソーラーを押しのけて昨年、生産量世界一となったのが中国の新興企業「サンテックパワー」だ。2001年の創業以来、10年もたたずに頂点に登り詰めた。
同社の日本法人社長、山本豊(51)はいくつものメーカーを渡り歩き、米シリコンバレーで起業した経験もある。その山本が、その急成長の理由に上げるのが「専業」だ。
「日本のような総合電機メーカーは1部門への資本投下の決断がどうしても遅くなる。世界のどこかの国がエネルギー政策を変えれば、数時間のうちに企業の方針を変えてでも対応しなければならない時がある。その点、太陽光発電専業であるわれわれの方が、圧倒的に早く決断できる」
同社は平成18年に日本にも進出。買収した国内の太陽光発電メーカーの販売ノウハウを取り込み、大手量販店と組む手法で売り上げを急拡大している。昨年には国内市場で早くも5位に食い込み、日本の大手4社を猛追する。
東日本大震災による東京電力福島第1原発の事故後、「脱原発」の動きが広がるなか、太陽光発電の国内市場は一層の成長が見込まれている。長年太陽光発電に携わってきた関連メーカーの担当者は「図らずも、大震災で太陽光発電に注目が集まった。設備購入費は下がり、数年内に補助金なしでも日本の各家庭が太陽光発電を導入できるときがくる」と言う。
太陽電池ビジネスは歴史が浅いだけに、世界の市場規模は2025年には09年の5倍以上になるとの試算も。未開の市場も大きく広がるが、国内、海外勢が入り乱れて市場争いは一層激しくなるとみられる。
中国経済に詳しい東大社会科学研究所教授の丸川知雄(46)は「日本メーカーが復活するためには、太陽光発電部門を独立させるといった抜本的な改革を通じて、経営と技術開発のスピードを上げていくしかない」と指摘する。
かつての勢いを取り戻せるか、それともそのまま外国勢に押し切られるか-。日本企業は重大な岐路に差し掛かっている。(敬称略)
2011年07月07日 産経ニュース

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