【こんな時代のヒット力】薬剤師を通じて適正使用を地道な説明会5000回
「ロキソニン」は売り上げ500億円を超え、医療用の痛み止めとしては圧倒的なブランドである。それが2011年1月、「ロキソニンS」として市販が認可されると、発売3カ月で6・5億円を売り上げた。年間10億円でヒットと呼ばれる市販薬の世界では、驚異的な数字である。いまもその勢いは止まらない。
ロキソニンのように、医療処方箋が必要な薬(医療用医薬品)から薬局やドラッグストアで買える薬(一般用医薬品)になることを「スイッチOTC(Over The Counter)」という。鎮痛薬でのスイッチOTCは26年ぶりの承認だった。背景には、実績のある薬を気軽に買えるようにすることでセルフメディケーションの幅を広げ、医療費の抑制につながるという医療行政の流れがある。
しかし、医療用医薬品のトップブランドを市販薬にすることは、必ずしも容易ではなかった。市販薬の解熱鎮痛薬市場は450億円前後で推移しており、シェアは、「バファリン」「イブ」という巨人がそれぞれ約2割を占める寡占市場でもある。これらは、薬剤師の説明がいらない第2類薬だが、「ロキソニンS」は薬剤師の説明を要する第1類薬になる。
薬効があるからこそ、使い方を誤った場合のリスクがあるのだ。そのため、販売のチャンネルは少なくなる。だが、第一三共にとってロキソニンは大事な薬。事故を起こすわけにも、販売で後れをとるわけにもいかなかった。
そこで、担当のマーケティング部・岡本淳さんは、「薬剤師を通じて、きっちり使ってもらうことをテーマにプロモーション」することにした。普通より、かなり分厚い製品の解説書や使用上の注意、ユーザー用の小冊子や、商品の特徴や販売の方法、適正な使用法を動画にしたCD-ROMなどの「適正使用情報キット」を作り、薬剤師に配布した。発売までの1年間をかけて、5000回以上もの説明会を地道に繰り返した。それほどの規模は同社でも初めてのことだった。
ユーザーに向けたCMなどのメッセージも、「派手にではなく“薬剤師に相談して”。事前から販売まで、一貫して適正使用を訴えた」(同)。
その結果、薬剤師にとってロキソニンSは力を発揮できる商品となり、現場でのモチベーションも上がり、販売と同時に好調なスタートを切った。
「地道なことをきちんとやる。それがブランドの礎となる。適正使用なくして、いまの結果はない」。そう語る岡本さんは、ロキソニンSの適正使用のため、いまも説明会を繰り返している。
2011年06月22日 ZAKZAK
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