【トップ直撃】心配りのDNAが生んだ独自のサービス事業
サントリーグループの一員として、壁面緑化や外食の業態提案・物件活用、ロジスティックス(物流)などさまざまなビジネスを多く手がける。還暦を過ぎた今も、応援団出身社長ならではの“粘り強さ”と“気配り”を武器に、熱く社会にエールを送り、業績アップを狙う。
――サントリーといえは、飲料ビジネスのイメージが強い
「もちろん本業は飲料ですけど。例えば、弊社では物流サービスを担うサントリーロジスティクス社と異業種企業のロジスティクスを組み合わせて、無駄のない配送をやるという提案をしており、成果がでています」
――物流は地味ですが、物流を制すものはビジネスを制すといえるほど重要です
「本当にそうです。相手さまは無駄を減らせて、しかもわれわれはビジネスチャンスをいただける。お互いよいお話ですし、今後も進めていきたいと思っています。あと、少し変わったところでは、受付や施設運営業務があります。サントリーグループでは、サントリーホールや工場の案内業務などが高い評価を受け、東京ミッドタウン、リニア鉄道館、大阪ステーションシティなどの受け付け業務を受注しました」
――よいサービスがよいビジネスを連れてくるという連鎖が起きている
「それは、創業者の鳥井信治郎や二代目の佐治敬三の時代から脈々と作り上げてきたお客さまを大事にするというサントリーの伝統のおかげですね。昔はお得意先さまをどこかに招待することが珍しくなかった。その際、例えば、お客さまが電車に乗られたらおしぼりを持っていく、雨の日に車から降りられるときには傘を差し出すなど、キメ細かな心配りがうちのDNAとして培われた。それが今も生きているのでしょう」
――そのDNAは若い人にも受け継がれそうですか?
「ぜひ、受け継いでもらいたいですね。最近『ザ・プレミアムモルツ』や『ハイボール』などがお客さまの支持を得て好調ですけど、マーケティングや宣伝広告活動だけではなく、地道でキメ細かい営業活動があったからこそ売り上げにつながった。営業の仕事は若い人から見れば苦労が多いと感じるかもしれないけど、決して役に立たないことじゃない」
――苦労といえば、大震災時の対応も大変だったようですね
「弊社は東北地方に工場がありませんでしたので、工場に大きな被害はありませんでしたが、倉庫設備の一部損傷や計画停電の影響などもあり、増産体制もすぐにはとれませんでした。それでも、『天然水』をなんとか被災地にお届けしようと、全社を挙げて力を尽くしました。少しでも、皆様のお役に立てたのなら幸いです。ただ、その時感じたことがありましてね」
――感じたこととは?
「今の世の中は効率を追いすぎているんじゃないかと。弊社も最新の倉庫設備を導入していましたが、震災の影響で一時使用できなくなった。その一方で、同じようにご苦労された町中の定食屋さんも焼き鳥屋さんも、翌日からオープンしてますでしょ? 一概に比較はできないけど、この違いはなんだろうって思います」
――そもそも、人間の存在自体が効率的じゃないですよね。時々、飲みに行ったりしないと生きていけない
「そうですよ、ある程度の余裕は会社も人間も必要です。車のハンドルの“遊び”の部分のようなものがないと、社会も会社もいきいきと回っていかない。今回の震災を通じて、私たちは効率と余裕のバランスの取り方について、考えなきゃいけない時期にきているような気がしますね」 (石島照代)
【会社メモ】サントリーグループのさまざまな商品・サービスを活用して「ビジネスチャンス拡大のサポート」「オフィス運営のサポート」「外食に関わるサポート」を企画・提案する。2003年設立。本社・東京都港区元赤坂。資本金1000万円、2010年12月期の売上高103億円、従業員数約100人。
■岡村美孝(おかむら・よしたか) 1950年6月6日生まれ、滋賀県出身。61歳。1973年大阪市立大経済学部卒。サントリー入社後、西東京支店長、東北支社長、市場開発本部長、取締役広域営業本部長などを歴任し、2009年にサントリービア&スピリッツ専務取締役首都圏営業本部長。10年4月より現職。
【家族】妻1人、子供2人。上から男、女で、両方とも社会人。
【花の応援団】「大学時代は応援団をやっていました。東京6大学のような華やかな感じは、関西にはないですけど。応援団の出身は弊社にはたくさんいますよ(笑)。サントリーに合うかもしれませんね」
【趣味】「歴史が好きです。司馬遼太郎が小説に書いた歴史的なところへ行くとか、歴史と旅行の組み合わせもいいですね」
【財布の中身】「10万円ですね。万が一のときのためにそれくらいはもっておかないと。(実際には)カードがほとんどで使いませんが。現金はお守りみたいな気持ちかなぁ」
【健康法】「散歩とジムです。ジムは車で10分くらいのところにあるんですけど、仕事が忙しくてなかなかいけないですね」
【座右の銘】「至誠、神のごとし」。「昔は『至誠、天に通ず』ということを言っていたんですけど、むしろ誠を貫くというのは神様のようなことだと、感じるようになりましてね。他にもたくさんあるんですけど、『嘘をつかない』というのが好きですね。私はそういうつもりでやっていますから」
【はがき】何かのお礼やちょっとした連絡の際、年間約300枚くらい手書きのはがきをしたためる。「大判の記念切手を貼り、専用のゴム印を押すなど工夫を凝らしています」
【愛社精神】「やっぱりサントリーは素晴らしい会社だと思いますね。僕はほんとに田舎の人間で、こういうふうに仕事をやらせてもらえるということは、考えてもいませんでしたし。一生懸命やってきた自信はありますけど、会社には感謝しています」
【サントリアン】サントリーグループ社員のことを指す。「『サントリアンの前によき社会人であれ。社会人の前によき人間であれ』って私はよく言うんですよ。どれだけエラそうなマーケティングの話をしたところで、人間として基本的なところができてなかったら、それはもうダメですから」
2011年06月21日 ZAKZAK
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