国際会計基準、強まる導入慎重論 金融庁が延期検討
国際会計基準(IFRS)の強制適用に対し、国内で慎重論が強まっている。金融庁は近く開く企業会計審議会でIFRSの導入について延期を検討する。2015~16年にも上場企業に強制適用することを考えていた09年時点と比べ、海外での基準統一に向けた動きや国内産業界の姿勢が大きく変化したことが背景にある。
■インドが先送り
「日本だけ、あえて先に一歩踏み出す必要があるのか」(大手製造業の経理担当者)。主要企業の間で高まる慎重論はこんな声に代表される。
金融庁が09年にIFRS導入推進を打ち出したのは、国際的に会計基準を統一する流れが加速、「世界基準」づくりから日本が孤立することへの危機感があったためだ。しかしその後、海外情勢は曲折。インドがIFRS導入を先送りし、ほかのIFRS採用国でも自国の基準に合わない部分は導入しないといった動きが出始めた。IFRSへの統一を表明していた米証券取引委員会(SEC)が今年5月に時間をかけて差異をなくすとして、事実上判断を先送りする考え方を提示。これが経団連の背中を押した。
過去1年近く主要企業の意見が割れていた経団連では5月末、会長企業の住友化学主導で「企業会計委員会」を新設。月末から始まる会計審で「導入を決めてから5年以上の準備期間を置く」ことを要望し、15~16年の強制適用を延期するように求める方針。経団連の米倉弘昌会長は20日の記者会見で「時間をかけて議論することは非常にいい方向」と表明した。
特に製造業の間で慎重論が強い背景には、時価評価の徹底を求めるIFRSは原価や収益の管理に活用しづらいという点がある。「IFRSはM&A(合併・買収)には便利だが事業の採算管理などには使いにくい」(大手電機首脳)という指摘がある。半面、海外での投資や買収が活発な大手商社やガラス大手などではIFRSを自主的に導入する動きが進む。
■制度設計難しく
会計審では適用対象を全上場企業とするかどうかも焦点となる見通し。「事業地域が国内だけで世界の主要市場で資金調達をしない企業にもIFRSが必要かどうか」という声があるためだ。
関係者の間では海外で事業を営む大企業に適用を義務付け、それ以外の企業は日本基準を認める案や、上場する市場を分ける案まで浮上しているが、具体的な制度設計には時間がかかりそう。会計審の委員には「延期が国際社会に対して後ろ向きに受け止められる」との意見も残る。当面は「延期」で合意形成を進めるとしても、最終的な適用の形をどうするかについては、議論が長引く可能性もある。
2011年06月21日 日本経済新聞
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