「3つの増税」難航必至 税調方針も根強い異論
政府税制調査会は16日、2012年度以降の税制改革の「基本的方向」をまとめた。社会保障と税の一体改革のため、消費税と同時に所得税も増税する方針を示した。政府は東日本大震災の復興に向けて新たに発行する国債の償還のための増税や、B型肝炎の和解金を賄う増税も検討している。政府税調は今夏までに、この3つの増税案の全体像を示す方針だが、16日の会合では消費税を10%に引き上げる案の意見集約を断念した。個人向け減税を「封印」した大幅増税だけに、具体案は難航必至だ。
政府・与党が17日午前に示す社会保障と税の一体改革案の最終案に盛り込み、12年度税制改正で主な議題とする方針だ。
野田佳彦財務相、片山善博総務相や各省庁の副大臣らで構成する政府税調が16日開いた全体会合では、社会保障と税の一体改革に伴う消費増税と所得税、法人税、相続税について議論した。
政府・与党が20日の決定を目指す消費税率の10%への引き上げ方針については、政府税調内部に異論が根強く、意見集約をあきらめて政府・与党に結論を委ねた。記者会見した財務省の五十嵐文彦副大臣は、税制を決めるはずの税調が消費増税という重要課題に意見集約できなかったことについて「(批判を)甘んじて受ける」と語った。
消費増税の是非は政府・与党の調整に移ることになるが、政府は「改革案をまとめられなければ、金融市場での日本の財政への信認が揺らぎかねない」として、与党内の慎重論を押し切る構え。ただ、実際の消費増税では、低所得者対策や、国・地方の配分など調整難航が予想される。
社会保障と税の一体改革のなかで、消費税以外の増減税については意見がまとまった。所得税については、現行40%の最高税率の引き上げや、サラリーマンの給与所得控除の見直しによる増税など、高所得者ほど負担をより多く求める考え方を打ち出した。
相続税も富裕層の負担増を検討する。所得や資産を低所得層に再分配する役割を復活させたいと理由を説明した。一方、法人税については、日本企業の国際競争力を維持するため、「実効税率を引き下げる」と減税の方針を明記した。
一体改革とは別に、政府は東日本大震災の復興に向けた国債発行の財源確保のための増税や、集団予防接種の注射器使い回しを原因とするB型肝炎の被害者への和解金のための増税も検討している。政府税調は7月以降にこの2つの増税も議論する。政府内では所得税や法人税、消費税などの臨時増税案が浮上しているが、どの税をどのくらい増税するか、調整が難しそうだ。
過去の増税ではまず減税を先行させ、国民負担を差し引きゼロとする手法が多かった。1997年に消費税率を3%から5%に引き上げた時も所得減税を先行させた。しかし今回は先行減税は封印し、「純増税」路線を鮮明に打ち出した。財政状況が厳しさを増す中、税収確保に躍起になる財政当局の姿が浮かぶ。
ただ増税論議の行方は次期政権の枠組みや与野党協議に左右される。「不安定な政権で複数の増税を同時に実現するのは困難」との声も漏れる。
2011年06月17日 日本経済新聞
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