近畿の中小建設業、資金繰り懸念広がる 日銀経済概況
日銀大阪支店は15日、近畿2府4県の6月の地域金融経済概況を発表した。近畿の景気は「緩やかな回復基調にあるが、このところ東日本大震災の影響が生産面などにみられている」として、5月に続いて判断を据え置いた。ただ、建設業などでは資金繰りの問題が広がりつつあるほか、電力問題が今後の関西経済に影響を及ぼす懸念も強まっている。
日銀大阪支店は4月の景気判断で震災の影響を先取りして判断を下方修正したが、その後は目立った変動が統計に見られないため、判断を据え置いている。早川英男大阪支店長は同日の記者会見で「震災後2~3カ月は関西経済が日本経済全体の落ち込みを防ぐ重要な役割を果たした」との見方を示した。
4月の実質輸出は近畿が前年同月比でマイナス2.6%と、全国のマイナス6.9%に比べ健闘するなど、輸出や生産の統計では近畿の減少は少なく、震災の影響は限定的といえる。だが、業種別でみると、建設や住宅関連を中心に震災の影響は広がっている。
■3カ月連続前年割れ
近畿の新設住宅着工戸数は2月以降3カ月連続の前年割れで、減少幅は拡大。復旧を急ぐ被災地に資材が流れ、近畿で住宅用資材の価格が上がったり、販売のための宣伝を自粛したりしたため「中小零細の住宅業者を中心に経営が悪化している」(日銀大阪支店)。
民間調査会社の帝国データバンク大阪支社がまとめた近畿の5月の倒産集計では、全体の倒産件数は4カ月連続で前年同月を下回った一方で、建設業は件数が増加に転じた。同支社の斉藤智・情報部長は「震災による倒産が旅行業界などから建設業などにも広がり始めた」と分析する。
資金繰りに困る企業も増加傾向にあるようだ。震災で影響を受けた中小企業の借入金を信用保証協会が保証する「東日本大震災復興緊急保証」も近畿全体で5月23日の受け付け開始からわずか1週間に約80件、35億円の利用があった。「6月以降も申し込みは増加傾向にある。思った以上に利用が多い」(大阪府中小企業信用保証協会)という。
■関西移転減少も
今後の見通しについて日銀は部品調達網(サプライチェーン)の寸断は「着実に修復されつつある」とする一方、関西電力が節電要請を発表したことから「電力の供給不安」を新たに懸念材料に上げた。早川支店長は「関西は原発依存度が高いため、仮に原発が次々と停止すると経済だけでなく市民生活にも大きな影響が出かねない」と危機感を強調した。
りそな総合研究所の荒木秀之主任研究員は「関西へ本社機能や生産拠点を分散する動きも減速する可能性がある」と指摘する。電力不安から生産活動に支障が出れば雇用や所得にも影響が及ぶ。震災直後の自粛ムードが解けてきた個人消費が再び落ち込む懸念もありそうだ。
2011年06月16日 日本経済新聞
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