ソニーを巨額赤字に暗転させた「繰延税金資産」って何だ?
東京電力、ソニー、マツダ。3月決算で巨額赤字に転落したこれらの企業に共通するのが「繰延税金資産」の取り崩しだ。一般にはわかりにくい仕組みだが、黒字予想が一気に巨額赤字に転じるなどインパクトが大きいだけに投資家も警戒が必要だ。
日本の事業会社として過去最大となる1兆2473億円の連結最終赤字を計上した東電。東日本大震災や福島第1原発事故による損害に加え、実は赤字を約4600億円もふくらませた要因となったのが繰延税金資産の取り崩しだ。
ソニーも約3600億の繰延税金資産を全額取り崩したことで、700億円の最終黒字予想が一転して2600億円の赤字に、60億円の黒字見通しだったマツダも567億円の取り崩しで600億円の赤字に転じるなど、取り崩しの影響は極めて大きい。
そもそも「繰延税金資産」とは何なのか。簡単にいうと、企業が払いすぎた税金を取り戻すための仕組みのことだ。
たとえば企業が取引先の倒産に備えた貸倒引当金を計上する場合、計上の段階では費用として認められず課税されてしまう。その後、取引先が実際に倒産して損金として確定した段階で税金が戻ってくるルールだ。退職金や賞与についても同様の現象が生じる。
引当金を計上した段階では税金を払いすぎることとなってしまうので、財務の実態を反映させるために、将来戻ってくると見込んだ税金の額を繰延税金資産として貸借対照表(バランスシート)に載せ、損益計算書では同額を「法人税等調整額」として計上、これが最終利益を押し上げる。
だが、これは取らぬたぬきの皮算用、「幻の利益」になってしまう恐れがあるのだ。重要なポイントが、税金の還付は法人税の納税時に相殺する仕組みであること。将来にわたり利益を出し続け、税金を納めることが大前提なのだ。赤字見通しとなった場合、税金を取り戻すことができないため、監査法人から資産の取り崩しを迫られる。損益計算書では取り崩した額を法人税等調整額として計上し、今度は最終損益を押し下げるというのが今回東電やソニーを襲った事態だ。
監査法人が取り崩しを迫るのは「3年連続赤字が取り崩しの一つの目安となる場合が多い」(企業の財務担当者)という。ソニーとマツダは11年3月期で3期連続赤字となっている。
ただ、繰延税金資産の取り崩しを行った企業は悪材料が出尽くしたとの見方もできる。巨額の繰延税金資産を計上していて赤字が続いている企業については今後の取り崩しに要注意だ。
2011年05月26日 ZAKZAK
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