セロテープの切り口が真っ直ぐ!!
家庭やオフィスの常備品である「セロテープ」。この呼び方はニチバンが商標登録した商品名で、一般的には「セロハン(粘着)テープ」と呼ばれる。1930年にアメリカの3M社が開発し、日本では47年にニチバンが開発、翌年発売した。そのため2008年は、ニチバンにとって「セロテープ60周年」の大事な年だった。
節目の年に出す新商品の開発を担当したのは、入社3年目の金重麻美さん。06年、研究開発部に異動し、2人目の担当者となった。
金重さんはまず、ユーザーの不満を上位から分析した。その結果、ギザギザにゴミがたまるなど「37%の人がテープの切断面のギザギザに不満を抱いていました」。だからといって、ハサミで切るのは面倒。この誰もが感じたことがある不満に金重さんは着目した。
ギザギザができる原因は、テープを引っかけて切るためにテープカッターの刃先が鋸のような形をしていることだった。だが、刃先を直線にすると引っかかりがなくなり、テープが滑りよれてしまう。また、鋭利な刃先はけがの危険性を増す。「直線でかつ鋭利でない刃先」の開発に金重さんら開発チームは苦しんだ。
何十種類ものデザインを行い、作っては試しての3年後、刃先に金属加工で生じるバリと呼ばれる“けば”を残しテープの滑りを抑える方法にたどりつく。だが、バリの耐久性など誰も分からない。5万回以上テープを切って耐久性を試し、やっとこの技術に確信が持てた。しかし、「60周年には間に合いませんでした」(同)。
完成した「直線美」は、テープが最も美しく切れるテープカッター。台の材質にもこだわり、どっしりとした重量感のあるものができあがった。だが、こだわったがゆえに価格は2200円と従来製品の約3倍にもなった。そのうえ、60周年に間に合わなかったため、広報・宣伝予算はほとんどゼロ。宣伝グッズは、店舗に展示する際の専用什器のみ。そんな期待されない船出だった。
しかし、金重さんはくじけなかった。文房具に詳しい著名人に手紙を書き、ブロガーにはメールを送って、商品を贈った。雑誌の編集部にもニュースリリースとともに持参した。「記事に書いてもらうのではなく、とにかくまず使ってもらいたかった」という。店頭に並んでも埋もれないように「切り口まっすぐ」と書いたPOPを商品に付けたのも金重さんのアイデアだった。
実際に製品を使ったブロガーや記者たちは、その使い心地に驚き、記事にした。それが反響を呼び、2010年、当初計画から1年早く累計販売3万台を突破。いまもその勢いは止まらない。
「成熟市場にある文房具は、見た目や機能では大差がありません。まず“使ってもらうこと”を目標にしたことがよかったのだと思います」。そう金重さんは振り返る。
2011年05月18日 ZAKZAK
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