社会保険未加入、下請業者ほど顕著/競争激化で経費削減か/国交省
国土交通省は、従業員を社会保険に加入させないことで経費を削減している「保険未加入企業」の実態調査結果をまとめた。元請・下請建設会社に所属する従業員の保険加入率を調べた結果、元請より下請、さらに1次下請より2次、3次下請と末端へ行くほど未加入従業員が多くなることが分かった。国交省は、経営環境が厳しい業者が従業員の保険料を削ってコストを抑えている実態があるとみて、こうしたデータを基に、有識者会議などで改善策を検討する方針だ。
調査は、3月に結果を公表した10年度の公共事業労務費調査のデータを活用。従業員10人以上の事業所で、1カ月に18日以上働く労働者(65歳未満、交通誘導員A、Bを除く)のうち、雇用保険、健康保険、厚生年金保険の法定福利費控除額のすべてを確認できた7万7891人分について行った。
土木工事の元請・下請の従業員の保険加入率は平均で71%だった。このうち元請に所属する従業員の保険加入率は86%で、平均を大きく上回っていた。一方、下請所属従業員の保険加入率を見ると、1次下請は72%で平均とほぼ同じだったが、2次では53%、3次以下では49%と末端に近づくにつれて加入率は急落していた。建築工事の元請・下請の保険加入率は平均が64%と土木工事より低かった。このうち元請は93%と平均を大きく上回っていたが、下請は1次が66%、2次が46%、3次以下が52%と、土木と同様に下請所属従業員の保険加入率は元請を大幅に下回っていた。
保険加入率を都道府県別にみると、島根県の92%を最高に、香川と鳥取両県が90%、石川県が88%、福井県が87%などと続き、地方の建設会社の従業員の保険加入率が総じて高いのに対し、東京都32%、埼玉県40%、神奈川県43%、大阪府48%、と大都市圏で低い傾向にあることが分かった。調査結果からは、建設投資の急減で低価格での受注競争が激化し、従業員の社会保険未加入による経費削減で少しでもコストを抑えて受注につなげようとする企業の行動がうかがえる。
2011年05月06日 日刊建築工業新聞
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