「時代の寵児」、最高裁は門前払い 堀江被告の実刑確定へ
ニッポン放送株を巡るフジテレビジョンとの攻防劇、突然のプロ野球参入表明、衆院選出馬――。「時代の寵児(ちょうじ)」として世間の注目を集め続けた堀江貴文被告(38)に三たび「実刑」の司法判断が下った。被告側は会計処理に問題はなかったと無罪を主張したが、最高裁は上告を棄却。堀江被告は「国策捜査で狙い撃ちされた」と訴え、「粉飾決算をしたことはなく白黒をつけたい」と語っていたが、門前払いの結末となった。
裁判では二審に続き、上告審でも、旧ライブドア(現LDH)の2004年9月期連結決算で、投資事業組合(ファンド)経由で売却した自社株売却益を売上高に計上した会計処理が粉飾決算に当たるかどうかや、堀江被告が違法性を認識していたかどうかなどが争われた。
被告側は「01年の企業会計基準の変更以前は、今回のような自社株売却益は売上高から除外すべき対象ではなかった」と主張。会計基準の変更はプロの公認会計士が知るくらいで「企業の代表者でも直ちに誤った会計処理だと認識できるはずがなかった」と訴えた。
有価証券報告書の虚偽記載を巡って会計基準が争点となったケースに、旧日本長期信用銀行(現新生銀行)の粉飾決算事件がある。最高裁は08年の判決で「会計慣行が明確で定量的、具体的基準であることが罪の成立条件」と判示。問題となった決算当時は条件を満たしていなかったとして、長銀元頭取らに逆転無罪を言い渡した。
堀江被告側はこの判例を引き、04年9月期時点では「明確・定量的・具体的」な会計基準はなかったと主張したが、最高裁は具体的な理由を挙げずに退けた。ファンドを「脱法目的のダミーだった」などと認定して売上高計上は許されないと判断した一、二審判決を支持した形だ。
被告側は「過去の粉飾決算事件と比べて粉飾額は少なく、実刑は重すぎる」などと量刑不当も訴えたが、一、二審は「粉飾金額そのものは小さくても、成長性の高い企業の姿を見せて投資判断を誤らせた犯行結果は大きい」として同種事案で異例の実刑を選択した。
最高裁は、被告側主張に対し「上告理由に当たらない」と述べ正面から答えなかったが、実刑を維持したことで、新興企業が虚偽の業績を示して投資家を欺く行為に司法が改めて強く警鐘を鳴らしたといえそうだ。
事件を巡っては、東京地検特捜部が06年1月、ライブドア本社などを家宅捜索し、堀江被告らを逮捕、起訴した。
堀江被告は一貫して無罪を主張したが、07年3月の一審・東京地裁は「グループ内で絶大な権限があった。すべての犯行は被告の支持、了承なしにはあり得なかった」と指摘し、有罪を認定。08年7月の二審・東京高裁判決も「ディスクロージャー制度を根底から揺るがしかねない」と一審を支持した。
2011年04月26日 日本経済新聞
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