新潟県内製造業、放射線検査が重荷に 商議所、支援策も
東京電力福島第1原子力発電所の事故で、新潟県内の製造業が輸出する際、海外の取引先から放射能汚染がないことの証明を求められる動きが相次いでいる。県内企業は外部に検査を依頼するなど対応に追われ、検査によるコスト増や納期の遅れなども出始めている。支援策として各企業が自社で作成した証明書を商工会議所が認証する簡易な手続きも始まった。
ステンレス鋼材の卸売りや金属洋食器の製造を手掛ける山崎金属工業(燕市、山崎悦次社長)は、欧州向けに輸出する鋼材の安全証明を日本海事検定協会(東京・中央)に依頼している。横浜港などで同協会の検査を受けるが、物量の多い鋼材は1回の輸出で数十万円のコスト増につながっているという。
日本海事検定協会の出先がなく検査に対応できない港もあり、輸出が止まっている鋼材も出ている。金属洋食器を輸出先のドイツで検査を実施する場合も費用は全額自社負担。山崎社長は「中小企業には手間やコストがかかりすぎ、この状況が続くと厳しい」と声を落とす。
電子部品向けの電極・絶縁材を製造するナミックス(新潟市、小田嶋寿信社長)は、台湾の半導体関連メーカーから「半導体は放射線に弱いため、放射能汚染がないことを証明する必要がある」と求められ、検査機関で証明を受けて輸出している。
水槽などを欧米やアジアに輸出しているアクアデザインアマノ(新潟市、天野尚社長)は、ドイツの顧客から安全証明を求められた。商品を製造した新潟市内で自治体が測定した放射線量の結果を英訳し、商工会議所に認証してもらったうえでドイツに送った。
作業工具のスリーピークス技研(三条市、小山喜一郎社長)は、中国での通関で日本製品の検査が厳しくなっていると指摘。「通常は中国の港に到着して3日で顧客に届く製品が1週間かかっている」として、顧客から「早めに出荷してほしい」との要請が来ているという。
日本貿易振興機構(ジェトロ)新潟貿易情報センター(新潟市)にはこれまで、輸出品の安全証明に関して県内企業から20件以上の相談が寄せられた。同センターによると、日本製品への対応は国や相手先の企業によって、まちまちだという。
行政機関が公表している放射線量を基に、製品の安全性を自社で証明することで安全性を認める場合もある。新潟商工会議所(新潟市)や三条商工会議所(三条市)などは、各企業の自社証明書が適正に作成されたことを認証するなどして支援している。
2011年04月21日 日本経済新聞
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