【経済情報スキミング】「企業財務会計士」新設、就職難の公認会計士に救いの手?
金融庁はこのほど、2013年をメドに、新たな国家資格として「企業財務会計士」を設けると発表した。弁護士があぶれて拙速の批判を浴びた司法改革同様、公認会計士も06年に試験制度を見直した結果、合格者が急増して食い扶持のない会計士が続出していた。今後は需要と供給のバランスに配慮して、会計士予備軍にしておこうとの狙いが透けて見える。
公認会計士は司法試験や医師試験と並ぶ最難関の国家試験。首相の諮問機関である金融審議会のもとに「公認会計士制度部会」が設置されており、公認会計士に求められる専門性と識見はきわめて高い。
公認会計士は、上場企業の業績報告である決算の監査証明にあたるのが主要業務で、監査人イコール公認会計士である。
しかし、04年に西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載やカネボウの粉飾決算など、企業会計の不祥事が相次ぎ、公認会計士で構成する監査法人のなかには共犯として金融庁から業務停止命令を受けたところもある。
それ以前にも大手銀行が監査人に監査承認を強要し、自殺に追い込んだとされる事件もあった。こうした不正事件があって以降、会計士に対する世間の目は厳しくなっていった。
一方で、06年に施行された金融商品取引法で、大企業は財務に関する内部統制報告書の提出が義務付けられ、監査人の仕事は決算証明だけではなくなった。公認会計士の試験制度改革は需要の高まりに応じて実施されたともいえる。
しかし、今回の企業財務会計士創設は、増え過ぎて質が低下したとの指摘もある会計士の減少をも意図している。「公認会計士制度に関する懇談会」でも、そうした指摘が出ている。
では、業務範囲は広がったのに、なぜ担い手を減らそうとするのか? それは、企業決算における監査人のストレスではないか。
「これだけ景気低迷が長引くと、企業業績はなかなか好転しないから、粉飾もどきの決算の片棒を担がされるケースもないとは言えない。決算の監査より監査助言を数多くこなしたほうが無難と考える傾向が出ている」(会計事務関係者)
企業決算に「ただし今後の推移を見る必要あり」などと「注記」を記入されると、その企業は信用不安に陥る。会計事務所はビジネスライクに甘い監査証明書を出して企業が破たんすれば同じ道をたどるし、辛口の採点をすれば顧客は逃げる。
企業財務会計士が企業の監査証明をするには、その後試験と実務経験をクリアすることが必要だが、最近は粉飾決算の責任を取らされかねない企業監査は、監査法人も及び腰。公認会計士業界さらには上場企業にとって、今回の制度は果たして有効な手立てとなるのか見極めたい。
2011年02月12日 ZAKZAK
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