被災企業に工場貸与 関西の中小企業、ものづくり再建支援
東日本大震災で被災した地域のものづくり再建に向け、関西の企業や自治体が動き始めた。中小メーカーでは空き工場の無償貸与のほか、将来的な起業支援も見据えた被災者の採用などを計画。阪神大震災の経験を被災地の復興に役立てようと、企業支援に乗り出している。大地震や津波で大きな被害を受けた生産分野の再建が、全国規模で停滞し始めている製造業の本格回復につながるとの考えから、被災地の中小メーカーへの支援が活発になりつつある。
プレス加工機器販売のファクトリー・エンジニアリング・サービス(F・E・S、大阪市)は岩手県一関市にあるプレス工場を震災で被災した事業主に1年間、無償で貸し出す。中国に製造拠点を移した日系部品メーカーが所有するが、現在は使っていないため、F・E・Sが仲介する形で工場を貸与する。工場は一部2階建てで、延べ床面積は約1350平方メートル。プレス設備や放電加工機、平面研削盤などの設備付きで「すぐに操業できる状態」(河原正明F・E・S社長)という。
河原社長はほかにも、臨時で被災者を採用する企業や、一時的に部品供給する企業を関西で探すなどの形で、被災地のものづくりを支援する。阪神大震災後に取引先の復興支援に奔走した経験を持つため、この経験を生かし、今回の震災からの復興に協力する考えだ。
熱処理加工のファインテック(大阪府大東市)は被災した同業者に代わって金型部品の熱処理加工を引き受ける。普段は加工していない正午からの時間帯を使い、翌日には発送するという。熱処理加工の場合、工賃に対する物流費の割合が大きいことから、被災地支援として片道分の送料は同社が負担。川端健一専務は「地元の熱処理メーカーが稼働するまでのつなぎとして活用してもらいたい」と話す。
金型製造の枚岡合金工具(大阪市)は技能習得後の創業支援も想定し、岩手県の被災者を1~2人採用する。同社が得意とするのは、冷間鍛造と呼ぶ常温での製造に特化した金型の製造で、ボルトやナット、自動車部品向けに使われる。
古芝義福社長は「東北には冷間鍛造を手がけるメーカーが少ない。2年ほど当社で働き技能を習得して、地元で町工場を興すなら、起業の手助けもするつもりだ。そうなれば、連携先ができ、当社のリスク分散にもつながる」と期待を寄せる。
枚岡合金やファインテックグループの表面処理加工会社ケンテック(大東市)など中小17社の共同出資会社、大阪ケイオス(大阪市)でも被災地のものづくり企業に対する支援策を検討中だ。
被災者の採用や空き設備の貸与のほか、中小企業基盤整備機構が被災した中小企業向けに仮設工場を整備する計画であることから、参加企業が持つ休眠機械の被災企業への提供なども参加企業に呼びかける。
2011年04月15日 日本経済新聞
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