一部操業再開も先行き見通せず　関西企業の「１カ月」

　東日本大震災の発生から１カ月が経過し、関西企業も操業再開や復興支援への動きは本格化している。ただ、部材供給網の途絶が製造業の新たな障害になっているほか、今後の業績に与える影響も深刻だ。震災の教訓を踏まえた「安心・安全」の再構築は、これからが正念場となる。


●再開も先行き不透明


　被災地の工場が停止したパナソニックなど関西の電機・機械メーカーは、懸命の復旧作業で一部は再開にこぎ着けた。だが資材調達が不安定なため、シャープが液晶パネルを生産する亀山工場（三重県亀山市）と堺工場（堺市）を５月初旬まで休止するなど、影響は拡大している。

　震災が業績に与える打撃も深刻だ。鹿島工場（茨城県神栖市）を一時休止したダイキン工業は、平成２３年３月期の営業利益が従来予想より数十億円減少する見込みだ。井上礼之会長は「経営に対するインパクトは計り知れない」と、ため息をつく。

　企業活動の停滞は、人の動きにも影響する。ＪＲ西日本は３月１１～３１日の山陽新幹線の利用者が、前年同期比１０％減少した。佐々木隆之社長は「早期の回復は難しい」と苦渋の表情を浮かべており、企業の先行きには不透明感が漂う。


●復興支援へ本腰


　こうした中で、復興に向け業界を挙げた活動も本格化し始めた。

　国土交通省の要請を受け、ハウスメーカー各社は仮設住宅への対応を急いでいる。積水ハウスは当面２千戸の供給を目指し、まず宮城県石巻市で４８戸を建設中。同様に、大和ハウス工業も奈良市や堺市などの６工場から１０トントラック約１００台分の資材を出荷し、岩手県陸前高田市などで建設を急ぐ。

　一方、供給不足に苦しんだ飲料業界では、部材調達の効率化に向け、ペットボトル容器のキャップ共通化に乗り出した。すでにサントリーホールディングスなどが、ロゴや製品名を印字せず白色無地にしてサイズを統一するなど、清涼飲料の品不足解消に懸命だ。

　また、関西経済連合会は１１日、「震災復興対策特別委員会」を発足した。１８日に第１回会合を開き、具体的な復興対策などを検討する。同様に大阪商工会議所は被災企業の販路開拓などを支援する情報サイトを開設、関西経済同友会も緊急アピールを発表するなど、産業界を挙げた取り組みも進みつつある。


●「安全・安心」道半ば


　一方、震災に伴う東京電力の福島第１原子力発電所の事故は、原発の“安全神話”を打ち砕いた。

　「原子力事業にとって非常事態。信頼性の回復に全力で取り組みたい」

　関西電力の八木誠社長は震災後、新たな安全対策を発表するたび、こう繰り返した。福島第１の事故を踏まえ、関電は炉心冷却機能の確保に向けた電源車や消防ポンプの配備を強化するほか、今年度中に美浜、高浜の２原発で防潮堤を新設するなど、総額約７００億円を投入する。

　関電は、総発電量に占める原子力の割合が５割超と、電力９社でも最も原発依存度が高い。震災後、全国で高まる原発への逆風は、同社の経営基盤をも大きく揺るがす。現在、定期検査中の美浜１号機と高浜１号機の運転再開のめどは立っていない。さらに美浜１号機はその後継機設置計画も宙に浮いており、関電には厳しい状況が続く。

2011年04月12日 産経ニュース