企業における計画停電対策のポイント
3月11日、自分が生きている間はまず来ないだろうと漠然と考えていた大地震がやって来ました。そして、最近では地震よりは圧倒的に「原発」の話題が多く、毎日のように耳にします。地震後に起きたガソリンや日用品の不足問題は徐々に解決する方向にあるようですが、「原発」の危険や「計画停電」という現実が私たちの目の前に重く圧し掛かっています。
自家発電設備によって会社や工場を半日以上動かせるという極めて恵まれた企業はほとんどありません。医療機関でも、医院や開業医をされているようなところには自家発電設備がありません。一部の企業を除けば、自家発電設備だけで計画停電の目安となる3時間を乗り切れるところはないでしょう。こうした事情のなかで、それぞれの企業が今後(特に需給がひっ迫すると言われる夏場)どのように計画停電に対して取り組むべきかでしょうか。本稿では「当たり前」のポイントから「これは知らなかった」というポイントまでを取り上げます。
●職場の周辺
・対象地域の信号機は消える
NHK調査によれば、東京都内だけでも約1万5600機の信号機が設置されています。その中で自家発電によって停電時でも動く信号機は約700機しかありません。信号機のある全ての交差点に警察官が出向くのは極めて困難です。「警察官がいない」という前提で、慎重に営業車を走行させなければなりません。特に夕方以降の計画停電は一瞬にして真っ暗になります。予定時間が近づいたら、一度停車して、周囲の様子を見るのも1つの方法です。
・集合ビルの事務所はエレベータに注意
当然ながらエレベータも止まります。計画停電の時間帯の30分前には、絶対にエレベータを使わず、来客にも使わないように、メールや張り紙(エレベータの前に大きく提示)などで通知する必要があります。高層階にある事務所の場合、その時間帯は事務所内から全員が退去する必要があるかもしれません。
・トイレ、給湯設備、冷蔵庫、冷凍庫などの適切な対応
執務作業に直接関係のないものでも、計画停電に備えた対応が必要な場合があります。企業の環境に沿った適切な対応を事前に準備すべきでしょう。特にトイレなどの水回りやガスなどでは、停電時に停止してしまう可能性がありますので、絶対に見落としが無いように確認します。冷蔵・冷凍の品物は、計画停電前に保冷バックに保冷剤を入れて冷蔵庫などに保管するとか、大きなものは保冷庫に移し替えるなどの措置を取ります。
●職場での対応
・照明
当然ですが、照明が消えます。「ろうそく」「ランプ」などを準備していても、普段から使い慣れていない場合には火事になる恐れがあるので、絶対に使わないようにしてください。懐中電灯(特に電池が不要の発電式)で、LED方式など発光の光度が高いものがあると便利です。消灯だと諦めて作業を中断するのが最善策かもしれません。しかし、企業によっては死活問題になりかねませんので、十分に検討されてから実行してください。
・PCや小さなサーバ
大規模なサーバはデータセンター内に設置されているので、運営会社で継続運転できるように対応をしてくれます。しかし、事務所の片隅に設置しているようなサーバは、原則としてPCと同じ扱いになります。ノートPCでは、3時間の停電に耐える容量を持ったバッテリーがあれば、継続して使用できます。デスクトップなどの場合は、作業中に停電になるとHDDがクラッシュして、以降の作業が全くできなくなってしまう可能性があります。停電前に必ずシャットダウンして電源コードを抜くことが望ましいでしょう。
また一部の重要なPCやサーバは、通常ではUPS(無停電電源装置)を備えています。ただし、停電時にも正常にシャットダウンができるようにするという程度のものであり、3時間の停電に耐えるものではありません。使用している機器の電力量によって異なりますが、通常の場合は実質的に5~20分程度しか持ちません。UPSでは環境に応じた最適な電源設定を行えるツールが付属しています。その設定を確認してみましょう。ツールを全く使わず、単純にUPSとPCの電源だけを接続しているケースが見受けられます。
ノートPCのバッテリーを長持ちさせる方法もあります。例えば、ソニーのVAIOでは「スタミナ壁紙」を選択すると通常の壁紙設定よりも最大30分ほどバッテリーが長持ちします。液晶方式に応じて消費電力が最小になる「色」があります。VAIOでは「白」が最も消費電力が少ないと言われています。
・電話、インターネットなどの通信
一部を除いて固定電話は使えます。発信・受信する機能自体は電話線から供給される電力で動作します。一部の機種や製品では電話番号のボタンが光らないといったことがありますので、一度確認してみましょう。しかし、IP電話は原則として使用できません。ADSLなどのスプリッターで電話線とインターネット回線を分離しているタイプでは、「電話」の機能は使えますので確認してください。コスト削減から大部分の電話をIP電話にしていても、今回のような緊急対応に備えて一部にアナログの固定電話を残している企業があります。全ての電話をIP電話にしている企業では、見直しを検討してはいかがでしょうか。
インターネットも、ターミナルアダプタなど全ての機器にUPSが備わっていない限りは使えません。なお、NTT東日本の「停電対応電源アダプター」などを別途契約している企業では、UPSと同様に停電しても、最大20分程度はインターネットを利用できます。このアダプターは、単三アルカリ電池12本で動作するとのことです。レンタル代として月額525円が必要ですが、企業によっては有効かもしれません。
・時刻情報を伴う機器
デジタルレコーダーなどの機器では予約録画中に停電になると、HDDに記録している場合に機器そのものが使用できなくなる恐れがあります。計画停電中に録画する可能性がないか必ず確認してください。一般的な機種では、ある程度の停電なら自立して時刻を正常に表示しますが、3時間もの停電では逆に機能しない場合があります。停電終了後に必ず時刻が正しいか確認します。
また電波時計は、一部の報道にあるように福島県の電波時計用アンテナで職員が不在となっているため、機能していません。既に時間が正確ではない電波時計もあります。東京近郊ではわずかに西日本地域の電波を受信できる可能性があります。
・FAX
FAXは、不特定多数の相手から受信したり、海外から受信したりすることが考えられます。受信中に停電したという最悪の事態を避けるために、計画停電の前に電源をオフにしておくのが望ましいでしょう。相手が分かっている場合なら再送信を依頼できますが、海外や不特定多数からの受信では、再送信を依頼ができない場合があります。
・エアコン
計画停電前に必ず電源を切りましょう。これは全ての電気製品に言えます。
・インターフォンや指紋照合ドア
インターフォンの音は鳴りません。指紋照合装置は、乾電池などで独立した電源で動作する一部の機器なら使用できますが、ジャーナル記録などは機種やメーカーによって異なります。必ず停電前に確認してください。監視カメラや録画装置と連携する機能は利用できない場合があります。
今回は一般的な企業の事務所などを前提に考慮すべきポイントをまとめました。実際には企業によって環境や必要とする条件が異なりますので、本稿を参考に自社に応じたチェックシートを作成することをお勧めします。
2011年04月04日 ZAKZAK
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