【こんな時代のヒット力】機能・用途を変えて市場開拓した「ラー油」
「ラテラル・マーケティング」という言葉がある。発想を転換し、商品の機能や用途を大胆に変えることで、調味料からおかずへと変化をとげたラー油などは、その典型例といえる。
中華料理の調味料であるラー油は、不景気に伴う内食ブームで需要が高まっていた。シェアのトップは、スパイスのトップメーカー、エスビー食品である。同社は2004年、香港の李錦記社と提携し、「具入り辣油」を輸入販売。09年には、「ラー油ぽん酢」「ラー油ごまだれ」を発売するなどラー油関連商品に力を入れ、市場も14億円規模に拡大していた。
そこに“食べるラー油”ブームが起きた。石垣島の辺銀(ペンギン)食堂の具入りラー油が評判になり、09年8月、桃屋が「桃ラー」こと「辛そうで辛くない少し辛いラー油」をヒットさせた。
エスビーが猛追したのは10年3月。「ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛」を発売する。通常は1年かかる商品開発をわずか半年で実現した理由は「それまでの研究蓄積と販売実績があったから」(広報担当・高井真さん)。ラー油のトップメーカーとしての意地が感じられる。
エスビーの「おかずラー油」は、フライドガーリック、アーモンドのほか唐辛子を発酵させた中華調味料の辣醤(ラージャン)を組み合わせ、ほどよい辛さ・うまさを追求。フライドオニオンとフライドガーリックを大量に使った「桃ラー」と差別化を図った。「あちら(桃屋)はご飯にのせるものからの発想。うちはラー油からの発想」(同)だという。
価格も、桃屋のラー油が110グラム400円前後なのに対し、エスビーは同量で希望小売価格330円と2割ほど安く設定した。
「おかずラー油」は商品が品薄の時期に登場し、“待たれていた商品”となった。発売前から注目され、テレビやヤフーなどでも取り上げられた。さらに、それがウェブの口コミとなって広まった。その結果、「発売と同時に店頭から消えた」(同)。
以後、同社は品薄のお詫び公告や店への対応に追われた。増産体制をとって供給が追いついたのは1年後、2011年の2月からだった。
エスビーの参加で、ラー油市場は直近1年で130億円と9倍に拡大し、“食べるラー油”という、まったく新しい市場が創出された。発想の転換で新たなものがまだまだ生まれるということをラー油は示したのだ。
今年3月、エスビーは「落合シェフのかけチャオ!イタリアンラー油」「のせタレ!ラー油ごま」など4種の新商品を提案。さらにラー油を進化させる。(村上信夫)
2011年03月31日 ZAKZAK
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