「コロナ不況」就活に暗雲 運輸や外食など採用計画見直し相次ぐ
新型コロナウイルスの感染拡大が、企業の2021年春入社予定の新規採用に影を落としている。特に緊急事態宣言に伴う移動自粛で利用客が激減した鉄道や航空などの運輸業界は、コロナ不況の長期化で業績が回復せず、人件費を抑制するため当初の採用計画を中止・削減する企業が相次いでいる。外食業界も同様の傾向だ。22年春の採用計画への着手は年末から年始にかけて本格化するが、先行きは見通せず、学生らの就職活動が厳しくなることが懸念される。
◇採用途中で中止、不採算店閉店
JR九州は、新型コロナの影響を踏まえ、21年春入社予定の新規採用者数を当初計画の約170人から約120人に減らすと発表した。当初予定の総合職35人を含む約80人に内々定を出したが、高卒も採用する鉄道部門の専門職採用を135人から85人に減らす。
4月の緊急事態宣言発令で全国的に人の動きが止まり、JR九州の利用客も激減。駅ビルなどの商業施設や外食などの事業も打撃を受け、4~6月期連結決算で初めて最終(当期)損益が51億円の赤字となった。宣言が解除されてからも業績は回復せず、お盆期間中(8月7~17日)の新幹線、在来線の利用者は前年同期比7割減と振るわない。JR九州は採用計画見直しの理由を「急速に進む経営環境の変化を受け、持続的かつ安定的な事業運営体制を強化するため」としている。
同じく4~6月期連結決算で最終(当期)損益が767億円の赤字となったJR西日本も、約900人の採用計画を750人に減らさざるを得ないほど追い込まれている。
世界的に経営が危機的な状況にある航空業界はさらに深刻だ。ANAホールディングスと日本航空(JAL)は相次いで21年春入社の採用活動中止を決定した。ANAはグループで約3200人を募集していたが、うち8割の約2500人の採用を中止。JALも約1700人の採用予定を、内定者を除いて中止する。
スターフライヤーは当初計画の約70人を約30人まで減らした。総合職やパイロット、整備士は予定通りに採用するが、便数の増減に左右されやすい客室乗務員は採用活動を中断。「需要が回復すれば不足してしまう」(同社)ため、状況の推移を見守っている。ソラシドエアも人数を絞り込んで採用は「若干名」とする予定だ。
一方、ファミリーレストラン「ロイヤルホスト」などを展開するロイヤルホールディングスは、新型コロナによる業績悪化で、ロイヤルホストや天丼店「てんや」など560店のうち、不採算店約70店を21年末までに閉店すると発表しており、採用計画も当初の約90人を段階的に削減している。
有効求人、6カ月連続減
雇用状況の厳しさは有効求人倍率にも表れている。厚生労働省が発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1・11倍で、前月を0・09ポイント下回った。6カ月連続の減少で、5年8カ月ぶりの低水準。新規求人は宿泊・飲食サービスでも前年同月比3割程度落ち込んでいる。
九州経済調査協会の小柳真二研究主査は「新型コロナで運輸業界は旅行や出張などの遠距離移動が減った。ニューノーマル(新常態)の時代を迎え厳しい状況に置かれている。21年以降の企業の採用は、もともと課題だった人材確保・育成の観点から一概に減るとは言えないが、不透明だ」と話す。運輸や不動産の関係者は「コロナ不況が長引けば22年以降もどうなるか分からない。採用を減らす可能性はある」と不安視している。【石田宗久】
出典:毎日新聞社
2020年08月19日
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