固定資産税に実態と違う基準? 誤徴収、各地で相次ぐ
長年、実態とは異なる道路を基準に固定資産税が徴収され、多く税金を支払っていたのに返還されないのは納得がいかない-。福岡県豊前市の男性(69)から特命取材班に疑問が寄せられた。取材を進めると、行政のミスか、それとも状況の変化か、双方の主張が食い違う中、少ない人員で調査に当たる行政の限界も見えてきた。
固定資産税は土地や建物の所有者に対し、市町村が評価額に応じて課税する地方税。男性は2017年6月、親から相続した同県久留米市山川町の宅地と裏側の畑2筆について、どのような基準で課税しているのか、市の担当者に尋ねた。
市は山川町を1971年に市街化区域に指定、宅地、畑とも周囲にある道路の路線価に基づいて土地の評価額を決める。どの路線にするかは、利用実態などを踏まえて判断するという。
市は男性に対し、宅地は面する市道、畑は宅地北側にある私道の路線価を基準にしたと説明した。男性は、北側の私道と宅地の間にはブロック塀があるため通り抜けできず、「南側の路地(里道)を使い長年、宅地や畑に出入りしていた」と主張。「利用実態を踏まえていない」と抗議した。
その後、市は再度調査し、他の自治体での事例などを踏まえ、3年に1度の評価替えがある2018年度から路地の路線価を基に評価額を見直すと男性に伝えた。その結果、畑の固定資産価格は17年度比で約470万円減、固定資産税額は約2万2千円減って約3万3千円になった。男性は過去の評価額もさかのぼって算出するよう求めたが、市は「把握が困難」として応じなかったという。
男性は怒りをあらわにする。「市街化区域になってから約50年、単純計算で100万円。こちらが申し出なければ、未来永劫(えいごう)高い税金を強いられていた。性善説で正しく評価していると思っていたのに、あまりにお役所仕事ではないか」
市によると、これまでの課税額が決まった時期は資料がなく、少なくとも20年以上前とみられる。市資産税課の三角浩一課長は「当時は適正と判断していたと考えられ、対応に重大な錯誤があったとは認められない」と説明した。
現実には、行政の限界もあるようだ。同課によると、評価額の定められた土地は市内に約34万7千筆あり、土地を分割する分筆や地目の変更など年間約1万筆について現地確認をしている。市の担当職員は12人で「変更分を優先しており、とても全部を確認できる状況にはない」と三角課長。男性のように申し出て調査するのは年に数件という。
固定資産税徴収を巡っては過去にもミスが相次いでいる。総務省は12年、09~11年度に全国の97%の自治体で課税誤りなどによる税額修正を行っていたとする調査結果を公表。修正の要因や対策などをまとめ、各自治体に周知した。その後もミスは発生し、今年も福岡市や大分県日田市などで誤徴収が発覚している。
厚生労働省の人口動態統計によると、高齢社会の到来で死亡数は19年に137万6千人と年々増えている。それに伴い、相続の機会も増加。相続して初めて未知の土地の存在に気付くケースもあり、用途や利用実態が不明確な土地は確実に増えているとみられる。
福岡県不動産鑑定士協会の浅川博範理事は「相続したものの、自身が居住していない土地については事情を知らないことも少なくなく、課税の前提となる現在の状況が過去と変わっていることもありうる。不明な点があれば、自治体や鑑定士などの専門家に尋ねるなど、納得いくまで確認してほしい」と呼び掛ける。 (金沢皓介)
出典:西日本新聞
2019年12月25日
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