秘密保全法の「適正評価制度」とは
○はじめに
日本弁護士連合会は、4月17日、「秘密取扱者適格性確認制度に対する説明責任を求めるとともに、秘密保全法制定に反対する会長声明」を発表した。
声明は、3月15日の衆議院内閣委員会において、委員から、防衛省内で自衛隊員の親族や友人関係、趣味、宗教等の個人情報を記載した「身上明細書」を使用し、調査が行われているのではないかとの質問があったのに対し、防衛相高官が「自衛隊の秘密保全に影響を及ぼすおそれがある」として回答しなかったことに対するもので、政府が制定に向けて準備を進めているとされる「秘密保全法」に反対する内容となっている。
○秘密保全法の適正評価制度
秘密保全法は、2010年に起きた尖閣諸島沖漁船衝突映像のインターネット流出事件をきっかけに、国の安全に関わる秘密情報が外部に漏えいするのを防ぐ目的で、行政機関が指定した、国の存立にとって重要な情報、「特別秘密」を漏えいさせた、または入手しようとした者を処罰するという内容の法律。
「特別秘密」の管理にあたっては、「特別秘密」の管理者やその周辺を政府が調査・管理する「適正評価制度」が導入され、「秘密取扱者適格性確認制度」は、その前段階として、自衛隊内で運用が行われているとされている。日本弁護士連合会によると、適正評価制度の対象者となるのは、国・地方公共団体・独立行政法人・民間事業者の職員で、実施権者は、行政機関の長などとされているという。
評価の観点は、「国の不利益となる行動をしないこと」などとなっているというが、同連合会では、「国の不利益」が具体的に何を指すのか不明確であるとして懸念を示しているほか、評価の材料となる、対象者に対する調査事項については、海外への渡航歴や借入情報などの信用状態、精神科を含む病院への通院歴などが含まれているため、「プライバシー権を侵害するおそれがある」としている。
5月29日に同連合会が開催した院内集会では、過去に発生した、公務員による機密情報の外部漏えい事件について、適正評価制度を使って知り得た情報で、調査対象者が機密情報をえいさせる可能性があるかどうかを判断することはきわめて困難であるとして、「適正評価制度があれば防ぎ得たと言える事案は、これまで存在しない」との見解を示した。
同連合会では、「本来国民が知るべき情報が国民の目から隠されてしまう懸念が極めて大きい」との見解を示している。また、「取材及び報道に対する萎縮効果が極めて大きく、国の行政機関、独立行政法人、地方公共団体、一定の場合の民間事業者・大学に対して取材しようとするジャーナリストの取材の自由・報道の自由が侵害されることとなる」としている。
○政府有識者会議の見解
政府で平成23年1月から6回にわたって開催された「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」では、平成23年8月にまとめた報告書において、従来から発生している情報漏えい事案に加え、情報がネットワーク上に世界規模で流出する事案も発生しているとしたうえで、機密情報に対する保全制度や法律上の制度が不十分であるとして、「国の利益や国民の安全を確保するとともに、政府の秘密保全体制に対する信頼を確保する観点から、政府が保有する特に秘匿を要する情報の漏えいを防止することを目的として、秘密保全法制を早急に整備すべきである」との姿勢を示している。
○参考リンク
日本弁護士連合会
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/130417_2.html
秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jouhouhozen/housei_kaigi/kaisai.html
2013年06月02日
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