医薬品ネット販売、ルール決まらず
○はじめに
厚生労働省「一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会」は、今年2月から検討を行っている一般用医薬品のインターネット販売について、5月31日、第11回目となる会合を開いた。
この検討会は、平成21年5月、インターネット通販のケンコーコム株式会社、ウェルネットが、第一類、第二類医薬品をインターネットで販売する権利の確認を求め、国を提訴した結果、平成25年1月11日、最高裁判所で国が敗訴したことがきっかけで、新たなルール作りが急務であるとして始まったもの。現在、二社が管理・運営を行っている通販サイトでは、第一類、第二類、第三類医薬品が販売されている。
○医薬品ネット販売に対する最高裁判決
判決の中で最高裁は、「インターネットによる郵便等販売に対する需要は現実に相当程度存在する」として、医薬品のインターネット販売を制限することは、一般消費者だけでなく、専門家、有識者、政府関係者の間でも反対意見があり、旧薬事法では違法とされていなかったインターネット販売を規制することは、インターネット販売業者の「職業活動の自由を相当程度制約する」もので、「新薬事法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効」と結論づけた。
一方、一般用医薬品は、使用した際に副作用が発生するリスクもあることから、厚生労働省では、同検討会において、販売ルールを明確化するとしていた。
○これまでの検討会の論点
平成21年の薬事法改正により、一般用医薬品の定義は、「医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が著しくないものであって、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく需要者の選択により使用されることが目的とされているもの」とされている。
そのなかで、一般用医薬品としての使用経験が少ない等安全性上特に注意を要する成分を含むものを「第一類医薬品」、まれに入院相当以上の健康被害が生じる可能性がある成分を含むものを「第二類医薬品」、日常生活に支障を来す程度ではないが、身体の変調、不調が起こるおそれがある成分を含むものを「第三類医薬品」と分類されており、第一類医薬品については、薬剤師が購入者に対して書面で情報提供することが義務付けられている。あわせて、第二類医薬品については、薬剤師または登録販売者が購入者に対して情報提供することが努力義務とされている。
現在、第一類医薬品の市場規模は約400億円、第二類は約6,400億円、第三類は約2,600億円であるという。
一般用医薬品の副作用については、国に報告された件数は平成23年度で252件。そのうち、死亡症例は、平成19年度から平成23年度までの5年間で24件だった。
ケンコーコムら二社の訴えに対する最高裁判決について、日本チェーンドラッグストア協会は、「現行の薬事法では、販売業は店舗販売業と配置販売業しかなく、無店舗またはネット、通信販売業という販売形態はない」として、「ネット販売だけのネット販売業者が医薬品の販売を可能にする場合には、薬事法に無店舗またはネット、通信販売業という販売形態を新たに設け、省令で詳細な運用ルールを定める必要がある」とコメントしており、インターネット販売については、かねてから慎重な姿勢を示していた。検討会においては、地域医療の一役を担う「かかりつけ薬局」の環境整備が進めることで、一般生活者の安全性が高まり、医薬品のインターネット販売は特段必要でないとしている。また、「最高裁判決は、原告が現行法であれば医薬品のネット販売が可能であると認めた判決であり、医薬品のネット販売における安全性や確実性を認めたものではない」との見解も示していた。
それに対し、5月31日の第11回会合で、NPO法人日本オンラインドラッグ協会は、「需要者にとっては過大な負担となるだけでなく、かかりつけ薬局の普及の必要性は高くない」、「インターネットを利用することで、通販業者が需要者のかかりつけ薬局になる」と反論した。
検討会では、具体的な方向性は示されなかったが、厚生労働省では今後、検討を行っていく方針。
○参考リンク
一般用医薬品のインターネット販売等の新たなルールに関する検討会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000ax9a.html#shingi81
2013年06月01日
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