ジョブ・カード、普及伸び悩む
○はじめに
厚生労働省職業能力開発局は、在職者に対する「ジョブ・カード」の普及促進を図るため、平成24年9月から設置していた「在職者に対するジョブ・カードの普及促進のための実務者会議」においてまとめられた報告書を公表した。
「ジョブ・カード」は、フリーターなど、企業で正社員として働いた経験が少ない人を対象に、正社員として働きやすくするため、これまでの職務経歴や学歴、訓練歴、保有する資格、自己PRといった情報を記入するシートで、厚生労働省のホームページからダウンロードして、自分で作成することができる。ジョブ・カード作成後、キャリア形成支援の専門家によるキャリア・コンサルティングを受け、職業訓練が必要と判断された求職者は、企業実習と座学を組み合わせた「職業能力形成プログラム」を受講後、実習を実施した企業から評価シートの交付を受け、実習を実施した企業、または他の企業で正社員として働くことを目指す。
○在職者への普及率は伸び悩み
現在、ジョブ・カードを取得している人の数は、平成25年2月時点で約83.7万人で、在職者全体に対しては、ほとんど普及が進んでいない状態であるという。
総務省統計局が実施している「労働力調査」によると、国内における、役員を除く雇用者の数は、平成25年2月時点で5174万人となっている。
同会議では、ジョブ・カードは「将来的に社会的なインフラとしての活用が期待される」としており、今後、在職者に対する更なる普及促進のため、在職者のジョブ・カードの活用が想定される場面を設定し、ジョブ・カードの活用を促進するための取組について、検討を実施することが求められると結論づけている。
○企業でのジョブ・カードの活用視野に
具体例として、同会議では、企業内における、ジョブ・カードを活用した人材育成・管理の推進に取り組むべきとしている。その有効性としては、在職者のキャリアに関する意識を向上させるだけでなく、自身の職業能力や、これまでのキャリアの特徴等をより正確に把握することが可能になるという。
報告書では、在職者に対するジョブ・カード普及促進のため、4社の企業において行われた試験的運用の実施結果についての結果が公表されている。
そのうち、A社(在職者54,000人、うち非正規44,000人)では、正社員として働くことを希望している5人の有期雇用またはパートタイムの在職者に対して、専門家によるキャリア・コンサルティングを行い、ジョブ・カードを交付した。A者の管理者(担当者)からは、「自社の評価基準と他の一般的な企業の評価基準の違いを認識でき、教育するときに、不足していると思われる項目を確認できた、「パート労働者についても、地域社会への貢献や、法令順守・顧客対応について、今まで以上に教育していく必要があると感じた」として、ジョブ・カード、キャリア・コンサルティングが、人材育成・管理のためのツールとして有効であると答えている。
一方で、同様の試験的運用を実施した1社からは、「社内固有の評価と必ずしも合致しない」、「結果は、自社の能力開発規程に基づく評価で決まってしまう」として、ツールとしては有効でないとの評価も受けている。また、ほかの1社からも、「1人当たりに対しての時間が多くかかる」、「企業としては、時間と労力が増加する」、「大きなメリットがない限りは前向きな導入にはつながらない」との意見もあった。
同会議では、在職者がジョブ・カードを利用した場合、企業から雇い止めなどに遭った場合に、再就職、就職活動に臨むにあたって、自身の強みをアピールするためのツールとしても、有効であるとしている。
○参考リンク
「在職者に対するジョブ・カードの普及促進のための実務者会議」報告書
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000032ny3.html
ジョブ・カード
http://www.mhlw.go.jp/bunya/nouryoku/job_card01/dl/jobcard19a.pdf
労働力調査
http://www.stat.go.jp/data/roudou/index.htm
2013年05月28日
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