「改正犯罪収益移転防止法」施行

○はじめに

「犯罪による収益の移転防止に関する法律（犯罪収益移転防止法）」が改正され、平成２５年４月１日に施行された。

同法は、犯罪による収益が組織的犯罪を助長する目的で使用されることに加えて、犯罪による収益が移転して事業活動に用いられることにより、健全な経済活動に重大な悪影響を与えることなどを防止する目的で制定、平成１９年に施行されたもので、マネー・ロンダリングやテロ資金供与を目的とする収益の移転を防ぐねらいがある。特定事業者による顧客等の本人確認や取引記録等の保存、疑わしい取引の届出等の措置を講ずることが規定されている。

警察庁刑事局組織犯罪対策部犯罪収益移転防止管理官では、同法改正のポイントについての資料を、平成２４年１１月に公表している。

今回の改正では、顧客の本人確認等が必要となる特定事業者について、これまでの金融機関、ファイナンスリース事業者、クレジットカード事業者、宅地建物取引業者、宝石・貴金属等取扱事業者、郵便物受取サービス業者、電話受付代行業者、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士、弁護士に加えて、「電話転送サービス事業者」が新たに追加された。電話転送サービス事業者とは、、顧客に対し、自己の電話番号を当該顧客が連絡先の電話番号として用いることを許諾し、当該顧客宛ての又は当該顧客からの当該電話番号に係る電話を当該顧客が指定する電話番号に自動的に転送する役務を提供する業務を行う事業者を指す。

電話転送サービスについては、同サービスを利用することで実際には所在しない都心の事務所から電話をしているかのように装えるなど、事業の信用、業務規模等に関して架空又は誇張された外観を作出することができるものであるとして、近年、振り込め詐欺やヤミ金融等に利用されているケースが目立っていることから、今般追加されることとなったという。

○取引時の確認事項の追加

また、今回の改正では、顧客と特定事業者が取引を行う際の確認事項については、これまでの「本人特定事項」に加え、「取引を行う目的」、「職業（個人）」、「事業内容（法人）」、「実質的支配者」についての確認を、主に申告によって行うことができることとされた。ハイリスク取引で２００万円を超える財産の移転を伴う場合は、個人顧客の場合は源泉徴収票、確定申告書、預貯金通帳など、法人顧客の場合は貸借対照表、損益計算書などを参照することにより、「資産及び収入の状況」を確認することができるとされた。

ここでいう「ハイリスク取引」とは、なりすましが疑われる取引等、マネー・ロンダリングのリスクが高い一定の取引を指し、「過去の契約の際に確認した顧客又は代表者になりすましている疑いがある取引」、「過去の契約時の確認の際に確認事項を偽っていた疑いがある顧客等との取引」、「イラン、北朝鮮に居住、所在する者との取引」がこれにあたる。

警察庁では、取引時の本人確認等を的確に実施するため、特定事業者に対しては、取引の際に確認した顧客の本人特定事項等に変更があった場合、顧客が事業者にこれを届け出る旨を約款に盛り込む等の措置を講ずるよう求めている。

2013年04月30日