民法改正における個人保証規制(3)
○はじめに
日本弁護士連合会は、4月23日、法制審議会民法(債権関係)部会において、2009年から検討が行われている民法(債権関係)の改正に関するシンポジウムを開催した。
今回、民法(債権関係)の改正に関する主な論点は、「保障制度の見直し(個人保証の規制)」、「債権譲渡の譲渡禁止特約の見直し」の二点となっており、審議の行方に注目が集まっている。
○個人保証の「相続」に関する問題点
シンポジウムの中では、日本司法書士会連合会が2012年10月に発表した「民法(債権関係)改正における保証制度に関する意見」が紹介された。
http://www.shiho-shoshi.or.jp/association/img/article_image/file/public%20comment_saiken_121023.pdf
この中で日司連は、個人が保証人となる個人保証制度においては、その全財産をもって責任を負う「人的責任性」や、主たる債務者との人的関係によって保証人となることを断りにくい「情義性」、自己の責任を十分に理解しないまま保証契約を締結してしまうことがある「軽率性」といった特性があると述べた。平成16年の民法改正では、保証契約に書面要件が設けられているが、「昨今の保証人被害の状況を鑑みると、保証人保護の規定としては未だ不十分であると言わざるをえない」と指摘した。
日司連では、司法書士が日常的な業務において、相続に関する相談を受ける機会が多いことから、これまでにも、保証人の相続人が相続財産について単純承認し、相当期間が経過した後、主たる債務の遅滞等により債権者から突然請求を受けて回復不能な事態に陥るという問題に数多く直面してきたという。
日司連では、平成16年民法改正の際、根保証の元本確定事由に保証人の死亡が規定されたことにより、一定の解決が図られたとみられている点については、個別の保証債務自体は保証人の相続人に当然承継されるといった抜本的な問題が残されているため、「保証人の相続人の保護としては未だ不十分である」と指摘している。
○保証人要件に「資力規定」を
日司連では、保証人保護の具体的対策として、保証人要件については、「保証人となる者は、保証債務を履行する資力がなければならないとの規定を設けるべき」との見解を示している。具体的には、現民法第450条を改正し、「保証人は保証債務を弁済する資力を有する者でなければならない」との条文を設け、強行規定とすべきであるとしている。日司連には、自己に資力がないにも関わらず、主たる債務者の懇願を断りきれずに、「まさか自分に請求されることはないだろう」という安易な期待のもとに保証契約を締結してしまい、主たる債務の履行が遅滞し、債権者から資力以上の弁済を求められて生活が破たんしたという相談が数多く寄せられているという。
債務者との関係性により、どうしても断りきれずに保証人になってしまうという問題が潜在的に存在しているかぎり、債権者に対する義務を強化するなどしても事態の改善は望めないという見解である。
また、日司連では、債権者に対して、保証契約の締結時において、契約内容等に関する説明義務を科す条文を設けるべきであるとの見解を示した。さらに、債権者が保証契約を締結する時点で把握している主たる債務者の収入、収益、信用、弁済計画及びその他の弁済能力に係る事項に関する情報についても、「債権者は保証人に説明する義務がある」との条文を設けるべきとしている。保証人をより確実に保護するため、いずれの場合も、「債権者が説明義務を怠った場合、保証契約を取り消すことができる」といった規定も設けるべきであるとの補則も提言している。
2013年04月30日
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