民法改正における個人保証規制(2)
○はじめに
日本弁護士連合会は、4月23日、法制審議会民法(債権関係)部会において、2009年から検討が行われている民法(債権関係)の改正に関するシンポジウムを開催した。
今回、民法(債権関係)の改正に関する主な論点は、「保障制度の見直し(個人保証の規制)」、「債権譲渡の譲渡禁止特約の見直し」の二点となっており、審議の行方に注目が集まっている。
○ABL活用の提言
同シンポジウムでは、ABL(動産・売掛金担保融資)の積極的活用に関する提言がなされた。
金融庁は、2013年2月、「ABL(動産・売掛金担保融資)の積極的活用について」と題し、中小企業等が経営改善・事業再生等を図るための資金や、新たなビジネスに挑戦するための資金の確保につながるよう、ABLの積極的活用に向け、金融検査マニュアルの運用の明確化を行うことを公表した。
http://www.fsa.go.jp/news/24/ginkou/20130205-1/01.pdf
ABL(Asset Based Lending)は、企業が保有する「在庫」や「売掛金」などを担保とする融資手法であるが、現在、金融機関の融資の担保は、「不動産担保」が中心であり、「動産・売掛金担保」は、あまり活用されていないことが知られている。
地域金融機関の場合、融資の担保の9割以上が「不動産担保」であるという。一方で、平成23年度の財務省「法人企業統計調査」による、国内企業の保有資産の状況は、「在庫」と「売掛金」の合計が297兆円であるのに対し、「土地」は186兆円となっており、動産・売掛金担保は、じゅうぶん活用することが可能な余地があるという。
ABLが積極的に利用されない理由について、同庁は、債権の場合は「第三者対抗要件の問題」と「譲渡禁止特約の問題」、動産の場合は「担保価値の問題」等を挙げている。特に、在庫は常時変動するものであり、金融機関においてその調査確認業務が負担になると考えられているという。
経済産業省でも、「在庫や売掛金を活用した新たな資金調達の方法」と題したペーパーを公表し、ABLの積極的な活用を勧めている。
www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g90529a02j.pdf
同省のペーパーによると、現在ABLを利用している企業が実際に「担保」として活用している在庫などの資産は、農産物から機械製品にいたるまで、幅広いものが評価の対象となっている。
「生産財」では材木、鉄鋼、鉄鉱石など、「原材料」では家畜、収穫前の農産物、「製品」では家具、自動車、被服製品、醸造酒などがそれに当たる。同省によると、在庫や売掛金等の流動資産を多く保有しており、資金調達ニーズが大きい企業は、成長資金を必要としており、担保として評価され得る資産の規模が大きいため、ABLを利用するメリットがあるという。また、売上高が急速に成長した企業、創業からの期間が短い企業、機械設備等の固定資産の規模が大きい企業についても同様であるという。
同省では、従来主に利用されている不動産担保や個人保証などによる人的担保では、担保に依存するあまり、借り手と金融機関とのコミュニケーションが不足になりがちであったが、ABLを活用した資金調達の場合は、双方の間で担保状況などの情報を共有する必要性があるため、コミュニケーションが活性化し、信頼関係が強化される効果もあるとしている。
日本弁護士連合会でも、2012年1月に採択した「保障制度の抜本的改正を求める意見書」の中で、ABLの積極的活用も含めた「保証に頼らない融資慣行の確立」を求めている。
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2012/120120.html
2013年04月30日
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