マイナンバー法案成立の行方は(2)
○はじめに
日本弁護士連合会は、4月23日、今国会で審議中の共通番号法案(マイナンバー法案)に関する院内集会を、衆議院第二議員会館で開催した。
同連合会は、基本的に法案には反対の立場を取っており、内容もそれに則したものとなった。
○災害医療からみるマイナンバー
全国保険医団体連合会理事の田中眞希氏からは、東日本大震災の被災地で医師として活動した経験から、「災害医療の現場でマイナンバーを有効に活用することができる」とする考え方に異論を唱えた。
被災地では、医薬品をを必要としている被災者に対して、医師がボランティアで医薬品を持参していたが、毎回違うボランティア医師が避難所を訪れ、毎回のように既往歴を尋ねて処方箋を置いて行くといった方法による医薬品の配布が問題視されており、被災者からは、「毎回答えるのが面倒」、「知らない医師に話すことに抵抗感を感じる」といった声が多く上がっていたことから、「マイナンバーから医療情報にアクセスすれば、被災者の負担を軽減することができる」との見方につながったとされているが、田中氏は、「マイナンバーはクラウド化したシステムの中で利用するもので、被災地で通信が復旧していても、患者の目の前でクラウド上の診療録が見られないのであれば意味がない」と述べ、また、「知らない医師に自分の話をするストレスは、そのまま知らない医師に情報を見られるストレスに変わるだけである」とした。被災者が望んでいない情報に対しても、医師がアクセスできるようになる危険性のほか、大都市では、災害時の混乱に乗じた不正アクセスによる犯罪につながる懸念も指摘された。
全国保険医団体連合会は、同法案について、「システム構築の費用は3000億円とされ、ランニングコストも毎年100億円単位でかかる」などとして、反対の立場を表明している。
http://hodanren.doc-net.or.jp/news/teigen/130315kyoutuu-banngou.html
○日弁連が指摘する「マイナンバー」の問題点
日本弁護士連合会は、同法案の問題点について、大きく分けて三つを挙げている。
1.目的が不明確
「より公平な社会保障制度や税制の基盤をつくることができる」とされているが、税制の基盤はマイナンバーを納税者番号として使用し、個人の正確な所得を把握できることが前提となっており、非現実的である。法案に着手してから何年も経過しているにもかかわらず、具体的な必要性が明らかになっていない。
2.プライバシーの危機
「名寄せ」により、プライバシーが透明化されてしまう危険性が大きい。民間分野を含め、利用の拡大が検討されていることも危険。
3.費用対効果も不明
システムの基本構築費として2000~3000億円、運用費が毎年350億円かかると言われているうえ、「効果」に関する試算、「税収増」に関する試算が行われていない。国民に対して増税を行おうとしている時に、効果が見込めないものを始める必要性があるのか?
○大型連休明けに衆議院通過か
安倍晋三内閣総理大臣は、4月26日の衆議院内閣委員会において、共通番号法案(マイナンバー法案)について、「より公平な社会の実現」、「国民の利便性の向上」、「行政運営の迅速化」が可能であると述べている。同法案は、同日の衆議院内閣委員会において、賛成多数で可決されており、大型連休明けの衆議院本会議でも可決される見通しとなっているという。
2013年04月29日
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