印刷業の労災、化学物質による胆管ガンで認定
○はじめに
厚生労働省は、2012年3月に大阪府の印刷事業場で、作業者が化学物質の使用が原因とされる胆管ガンを発症した件について、「化学物質との因果関係を認める」と発表した。今後は、労災認定や化学物質の規制を行う方針。
○長期間、高濃度で「ばく露」
2012年9月に設置された「印刷事業場で発生した胆管がんの業務上外に関する検討会」において、現時点での医学的知見として、
(1) 胆管がんは、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露することにより発症し得ると医学的に推定できること
(2) 本件事業場で発生した胆管がんは、1,2-ジクロロプロパンに長期間、高濃度ばく露したことが原因で発症した蓋然性が極めて高いこと
を報告書として取りまとめた。
今後は、化学物質のばく露防止対策を強化する方針で、洗浄作業等を行う事業場に対する一斉点検のほか、ジクロロプロパンについては、早急にばく露の実態を踏まえ必要なばく露防止措置を検討し、夏頃を目途に結論を得て、速やかに特定化学物質障害予防規則等の改正を行うとしている。また、ジクロロメタンについても、有機溶剤中毒予防規則に基づくばく露防止措置の遵守を徹底させるとした。
○労災認定も迅速に
労災認定については、大阪の印刷事業場の労働者等から請求のあった16件については、大阪労働局に対し、3月中に決定を行うよう指示を行ったという。
また、同事業場からは2013年2月に同様のケースによる労災請求が1件行われており、調査が整い次第速やかに決定に向けた検討をすすめる方針。同様のケースによる労災請求は、大阪、宮城、福岡などの事業所でも行われており、2013年2月末時点で64件となっている。そのうち、当事者が死亡したケースが39件あった。労災請求の時効については、同発表があった2013年3月14日まで進行しない取扱いとするとしている。
○過去には作業中の死亡事故も問題に
印刷会社における労働問題については、過去に24時間操業を行っている業者で労災死亡事故が発生したことで、労働環境が特殊かつ過酷であることが浮き彫りとなった。
2010年、京都市左京区の印刷会社「プリントパック」において、入社して一ヵ月半の26歳の男性作業員が印刷機に頭を挟まれて死亡した。同社は、インターネットに受注による365日・24時間操業を開始したことで急成長し、2005年に7億円だった売上高は、2009年には7.5倍の52億円となっていた。
受注を行っているウェブサイトにおいても「安さ」を強調しており、個人の顧客でも利用しやすくなったことで受注一件あたりの単価が低くなるため、そのぶん受注件数を大幅に拡大する必要があり、現場で作業にあたる労働者にとっては、厳しい労働環境となっていた。一ヶ月あたり130時間の残業が常態化していた時期もあったという。
参考リンク
・厚生労働省による発表概要
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002x6at.html
2013年04月01日
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