大震災の影響、世界の産業界に波及
東日本を襲った巨大地震と巨大津波から10日以上が過ぎ、世界中の企業への影響が徐々に明らかになり始めた。
■寸断されたサプライチェーン
21日には携帯電話の世界最大手、フィンランドのノキアもサプライチェーンの寸断について警告を発した企業の1社に名を連ねた。世界中の広範な製造産業に基幹部品を供給する日本の役割の大きさが改めて浮き彫りになっている。
ノキアは部品のおよそ12%を日本から調達しており、大震災の影響で一部の携帯電話製品が生産できなくなる恐れがあるとした。
「日本で調達していた関連部品や原材料が業界全体で不足する見込みのため、当社の製品供給能力にも支障をきたすと思われる」と同社は話す。
現代の世界的なサプライチェーンの抱えるリスクが今回の災害で顕在化した。企業は何らかの混乱が生じた場合に備える余剰在庫をほとんど持たず、世界中の取引業者のネットワークを駆使したジャスト・イン・タイムの供給体制に依存しているからだ。
技術メーカーは特に日本の影響を受けやすい。携帯電話やコンピューターといった製品では日本製の半導体や電子部品が極めて重要な部分を占めるからだ。
■世界の携帯電話メーカーに打撃
パナソニック、日立、ニコン、NEC、ソニーなど日本の大手メーカーは、工場の被災あるいは電力不足により通常の生産量に届かないと報告している。
スウェーデンの通信機器大手エリクソンや携帯電話大手の英ソニー・エリクソンなど日本以外に拠点がある企業も、サプライチェーンに問題が起きる恐れを表明している。
大半の携帯電話メーカーが多少の影響を受けるとみられるが、最大手のノキアは特に打撃が大きいだろうとアナリストは指摘する。
同社によると、第1四半期(1~3月期)の売上高には響かない見通しだが、長期的にどのような影響が及ぶかを見極めているという。さらに代替生産の方法を模索し、日本および日本以外の供給業者と対応策を協議中としている。
一方、自動車メーカーも日本への依存度が非常に高い業種の一つだ。仏ルノー、独オペル、独フォルクスワーゲン(VW)、スウェーデンのボルボ・カーなどが部品調達不足への懸念を表明した。
米ゼネラル・モーターズ(GM)は21日、日本からの部品調達不足を理由に米ルイジアナ州の工場を停止する計画を発表した。
■震災関連の保険金支払い、12億ドルも
再保険世界大手のスイス再保険(スイス・リー)は同日、東日本大震災に関連する保険金支払いが約12億ドルになるとの試算を公表した。
これは今回の災害の予想最大損失額19億ドルの約63%に相当する。先週、同業の仏スコールが発表した試算でも、予想最大損失額2億6000万ユーロに対し、保険金支払いは1億8500万ユーロ(2億6300万ドル)弱と同様の比率が示された。
米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は18日、第1四半期の災害損失額10億ドルのうち日本関連で7億ドルの費用を見込んでいると述べた。
ただし、スイス・リーは、損害予想には不確定な部分が多いと警告している。個々の顧客から損失見込みのデータを集めたのではなく、災害査定機関が提供する推定値に基づいているためだという。
■米ティファニーも収益予想を下方修正
高級ブランドでは、米ティファニーが装飾品業界として初の東日本大震災の売上高に対する影響を分析し、収益予想を下方修正した。
マイケル・コワルスキー最高経営責任者(CEO)は、第1四半期(2~4月期)の売上高が世界全体で11%の伸びとなるのに対し、日本では15%減少するとの見通しを示した。同社にとって世界売上高のほぼ5分の1を日本市場が占めている。
日本市場の需要は大震災前には堅調に推移していた。為替変動を除外した比較可能な店舗売上高でみると、10年第4四半期(11~1月期)は1%増で、前年同期の9%減から改善していた。
ティファニーは日本国内で56店舗を営業し、米州以外では最大市場となっている。
2011年03月22日 日本経済新聞
最適な税理士が見つかる!
T-SHIEN税理士マッチング
依頼したい税理士業務と希望金額を入力し、匿名で全国の税理士事務所から見積を集めることができるシステムです。送られてきた見積の中から、最適な税理士を選ぶことができます。