産業素材の取引停滞 設備損傷・計画停電で
東日本巨大地震の影響で、石油化学製品や鋼材など素材や部品の取引が停滞している。生産設備の損傷や計画停電で生産量が大幅に落ち込んでいるうえ、燃料不足で物流も滞り、原料や製品が十分に届かないためだ。ただ東北への出荷再開など、復興に向けた動きも出てきた。
●石油化学製品
身近な石化製品であるレジ袋が各地のスーパーやコンビニエンスストアで足りなくなっている。原料の合成樹脂ポリエチレンは、最大手の三菱化学グループで生産能力の5割強に相当する設備が止まったまま。輸入品についても港湾のクレーンの燃料不足などで陸揚げが滞っている。
国内レジ袋メーカーは設備に大きな損傷を受けなかったが、計画停電で生産量は急減。一方、被災地ではがれきの処分のためのゴミ袋の需要が急増し、品薄感が強まっている。レジ袋の大手メーカーは16日、関東地区の工場の稼働と東北への出荷を再開した。
このほか、配管や雑貨に使う塩化ビニール樹脂では信越化学工業の鹿島工場(茨城県神栖市)が止まっている。
●鋼材
建設鋼材のH形鋼では「14日から入荷がない」という鋼材問屋がある。千葉など東京湾内にある物流拠点がトラックの確保や被災状況の確認に追われ、出荷が止まったためだ。電炉最大手、東京製鉄の宇都宮工場(宇都宮市)も出荷が止まった。倉庫内の鋼材が荷崩れし片付けを急いでいる。
鉄スクラップでは「原料の確保や輸送に支障を来す可能性がある」(鉄スクラップ業者)。重機やトラックなどに必要な軽油の確保が難しくなっているためだ。
●ガラス
旭硝子は建設用ガラスの国内唯一の拠点である鹿島工場(茨城県神栖市)の稼働が停止した。同社は「操業再開まで1カ月かかる」(同社)としている。鹿島工場の建設用ガラスの生産能力は日産850トンと国内最大。国内需要の約3割を賄っている。
「地震後にビルや住宅のガラスが入荷しない」。大手ガラス店、浜屋ガラス(東京・新宿)の小池健一会長は話す。旭硝子は中国のグループ会社や自動車用ガラスを生産する愛知工場からガラスを調達する方針だが「手に入るまで1カ月かかる見通し」(小池会長)。
ゼネコン(総合建設会社)各社は週明けから工事を再開しているが、現在は地震後の被害確認や施主への説明をしている段階。来週から工事が本格化し、ガラスなどの建設資材不足が表面化する可能性がある。
●セメント
東北・関東向けセメント供給拠点の大船渡工場(岩手県大船渡市)が稼働を停止している太平洋セメントは「セメント在庫は1カ月分はある」と話す。東北に15カ所ある物流・在庫拠点のうち、太平洋側の8カ所が機能を停止しているが「日本海側の7カ所から出荷を続けている」(同社)。関東向けには北海道や九州の工場から海上輸送を検討している。
●合板
合板は最大手メーカーのセイホク(東京・文京)の宮城県石巻市の生産拠点が震災被害を受けたため、問屋各社への入荷が大幅に減っている。「秋田のメーカーから日本海側の迂回(うかい)ルートで運び込んでいるが、入荷は2割強にとどまる」(ジャパン建材)
合板問屋の多くは地震前の受注分をこなすのに精いっぱいで、新規受注は断っているところが多い。入荷が急減するなか、当面は手持ち在庫の範囲で販売するしかなく、「いずれは復興需要で足りなくなるのが確実」(東京の問屋)との見方が広がっている。
●電子部品
電子部品では半導体のほか、携帯電話に使う水晶部品などで複数の工場の稼働が止まっている。メーカー関係者は工場が再開しても「ガソリンが不足しているため、原料の調達や従業員の出勤が困難で出荷停滞は長引くのではないか」とみている。
2011年03月16日 日本経済新聞
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