復旧策、まず生活支援 政府、経済再生策も準備
政府は東日本巨大地震の対策を巡り、原発事故対応や被災地への救援物資などの配布が落ち着き次第、2011年度第1次補正予算を念頭に、がれきの撤去などの復旧策を打ち出す。さらに中長期的な復興策や経済対策を踏まえた「二段構え」で日本経済の復興につなげる。福島第1原子力発電所などの事故に伴い避難指示が出た地域についても災害救助法を適用。仮設住宅などの建設費を市町村に代わって国や県が負担できるようにする案も浮上している。
現行の災害救助法は自然災害で住宅が焼失したり、破壊されたりした場合を想定している。今回の原発事故のように自然災害とは言い切れず、居住可能な住宅も残っている場合は本来は支援の対象外。ただ避難が長期化すれば災害救助法を適用し、市町村の負担を軽減する方向で検討する。
政府が力を注ぐのが被災者の生活支援策。厚生労働省は東日本巨大地震に伴う臨時措置として被災地域の患者が保険証や処方箋を持っていなくても医療・介護サービスを柔軟に受けられるようにする。特例で患者の医療費を免除する措置もとる。医療の提供体制を立て直すため病院再建の低利融資を実施する。
財務省は被災者を対象に15日までだった確定申告の期限を延長。被災者や被災企業について災害時に認められる所得税や法人税の軽減措置を2010年分の確定申告でも認める方向だ。現行では損失が発生した11年分が対象のため、減税や還付は来年以降になるが、特例として前倒しする。
鹿野道彦農相は16日夜、1日あたり食料150万食、飲料水125万リットルを供給できる態勢づくりを急ぐ考えを表明した。被災地への輸送については自衛隊などの協力を求める。同省は地震発生から16日朝までに被災地に食品176万食を送った。
生活支援に続く被災地の復旧・復興では、津波で崩壊した市街地のがれき撤去に加え、道路や港湾などインフラ整備が優先課題となる。政府は財政力が弱い自治体に配慮して、地方交付税の前倒し配分も検討する。
1995年の阪神大震災では、政府が震災から38日後に提出した補正予算に廃棄物処理や道路、港湾、住宅、公立学校などの復旧費用などとして約1兆円を計上した。政府は今回の地震でも公費によるがれき撤去を検討。被害規模を把握して11年度補正予算編成を急ぐ。
インフラ施設の一部では復旧に向けた動きも出ている。国土交通省は17日から仙台空港を本格稼働させる。これまではヘリコプターだけが発着できたが、がれきなどを取り除いて1500メートルの滑走路を確保。米軍や自衛隊の緊急物資を積んだ輸送機が発着できるようにした。海上輸送ルートでは、17日にも宮城県の仙台塩釜港と岩手県の宮古港で一般船舶が入港できるようになる。
地方自治体の支援を巡っては、総務省が岩手県や宮城県、福島県などの自治体を対象に、6月分の普通交付税の全額を4月に前倒しで配分する方向で検討を始めた。普通交付税は通常4月、6月、9月、11月の4回に分けて配分している。前半の2回分を4月中に配り、被災した自治体の復興・復旧に向けて資金繰りを円滑にする。
復旧・復興の第2弾は日本経済を浮揚させる経済対策としての意味合いを持つ。政府は防災対策の強化や原発事故を受けたエネルギー対策の見直しを検討する。雇用対策や中小企業の支援、風評被害を防ぐための農業支援策なども課題となりそうだ。
想定を超える巨大な津波と原発事故で防災対策の強化は必須。政府・与党内では被災地以外の発電所、学校、病院などを対象にした耐震補強を急ぐべきだとの声が出ている。中長期的には原子力に代わる新エネルギーの研究促進なども必要となる。
阪神大震災後は円高が進んだこともあり、復旧・復興と経済対策をあわせた補正予算を3度にわたって編成した。今回の地震でも政府は被害や実体経済の状況を見極めつつ、数回の補正予算編成を検討する考えだ。
2011年03月17日 日本経済新聞
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