札幌市がコンテンツ特区申請 映画出資ファンドも
規制緩和や財政支援などを受けられる国の総合特区制度で、全国から出された認定申請の審査が大詰めを迎えている。道内では札幌市の「札幌コンテンツ特区」や、道などが提案した「北海道フード・コンプレックス国際戦略総合特区」が結果を待つ。景気低迷が長引く道内で、強みである食産業や観光資源を生かす試みだけに、注目が集まっている。
「ハリウッド映画が道内でのロケ撮影に関心を示しても実現しない例が多い」。札幌市ものづくり産業課の松川泰昭課長は残念がる。最近ではハリウッドの大作映画「ナルニア国物語」が北海道の雄大な風景に引かれ、ロケ撮影に意欲を見せたという。だが「海や海岸線での撮影の規制が複雑などの理由で断念してしまった」(松川課長)。
映画やテレビのロケ撮影で道路や河川などを使用する際、撮影場所ごとに許認可申請の窓口が異なる。書類提出などの手続きも煩雑で時間がかかる。札幌市が提案した「札幌コンテンツ特区」では、こうしたロケ撮影の申請窓口を一本化する規制緩和を目指す。
■産学官で新組織
具体的には産学官で来年4月に新組織「Film Sapporo」を立ち上げ、許認可申請を受け付けるほか、ハリウッドなど海外を視野に入れたロケの誘致活動を担う。
億単位のお金が動く映画の製作は資金調達に悩む例もある。特区提案ではロケ撮影する映画に出資するファンドの創設も盛り込んだ。資金調達を支援する地元の体制を整えることで「北海道で映画を撮影したいという製作者の意欲を高める」(松川課長)考えだ。
札幌市が映像産業への規制緩和や資金支援に意欲を見せる背景には、「ロケ撮影が地域に与える経済波及効果が大きい」(松川課長)ことがある。
大作映画の撮影では、数百人単位のロケ隊が長期間、滞在するため、ホテルや飲食、交通機関など幅広い産業にお金が落ちる。映画がヒットすれば、映画の舞台を訪れる観光客を期待できる。実際、道東を舞台にした中国映画をきっかけに、道内を訪れる中国人観光客が激増したことは記憶に新しい。
札幌市は規制緩和でロケ撮影が増え、現在10億円にとどまる経済効果が2015年度には144億円まで高まるとそろばんをはじく。将来は道と連携して、知床や阿寒など景勝地に特区対象を広げる考えだ。
国の総合特区は日本全体の先駆的な取り組みを目指す「国際戦略」と地域資源を生かす「地域活性化」に分かれる。今秋、初めての認定申請を受け付け、全国から計88件、道内からは計5件の申請があった。
■来月に審査結果
うち地域活性で「札幌コンテンツ」と、下川町の「森林総合産業」の2件、国際戦略で北海道経済連合会や道などが国際戦略特区に申請した「北海道フード・コンプレックス」が書類審査を通過した。フード・コンプレックス特区では札幌、十勝、函館の三地域が連携しながら、食産業の高付加価値化につなげる構想を描く。
国の審査は専門家委員によるヒアリングも終わり、12月中に審査結果が公表される。公共事業の縮小に歯止めがかからないなか、今後も規制緩和など知恵を絞った地域活性化の取り組みが求められる。
2011年11月25日 日本経済新聞
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