関西の中小、連携強化へ新会社 新事業や海外受注めざし
関西の中小メーカー間で、単独では難しい新規事業進出や海外からの受注獲得を目指して、共同出資で新会社を設立する動きが相次いでいる。従来、中小では異業種交流組織の結成など緩やかな連携が多かったが、会社組織にすることで収支や責任の所在を明確化し、事業やプロジェクトの確実な遂行を目指す。オーナー色の強い中小がより強く結束し、円高などによる空洞化や競争激化を乗り切る構えだ。
金属加工の三協製作所(大阪府東大阪市)は同業の浜野製作所(東京・墨田)と共同で2010年12月に「MDファクトリーHS」を設立した。両社の技術を生かした新製品の開発だけでなく、他社の経営革新支援や営業代行、商品開発支援を手がける。2月には生産性向上のための研究会も東京で立ち上げた。
金型部品製造の新日本テック(大阪市)や金型製造の枚岡合金工具(同)など大阪府内の17社が出資して10年11月に設立した大阪ケイオス(同)は、企業PR映像の制作・インターネット配信を請け負う。企業の情報発信力を高めるため結成したグループが母体で、参加社以外からの仕事も請け負うため会社組織にした。すでに3社から映像制作を受注するなど立ち上がりも好調で、有料セミナーの開催にも乗り出している。
中小単独では難しい海外からの受注獲得を狙って設立されたのは、ゼネラルプロダクション(京都府精華町)。ナット製造のフセラシ(大阪府東大阪市)や熱処理加工の東研サーモテック(大阪市)、大阪東信用金庫などがすでに出資。現在の資本金は5000万円で、3月末までに計20社が出資し、1億円に増資する。
ゼネプロは鋳造や熱処理といった加工に優れた中小を組織化。海外の顧客を開拓し、各工程を参加企業に割り振ることでコストを抑えながら、品質の高い完成品や完成部品の製作を目指す。
兵庫では、共同受注を目指して結成された企業グループが合同会社(LLC)設立も視野に活動を始めた。県の外郭団体、ひょうご産業活性化センターが認定する成長期待企業の集まりが母体で、10年8月に「成長期待企業・グローバルの会」を結成。このうち、電機製造の明興産業(神戸市)など6社が先行して提携した。
旗振り役でもある同センターの吉岡昭一郎理事は「LLCを設ければ各社のリスクを分散できるし、共同受注に向けた人材を置けば各企業の弱点も補える」と話す。
中小同士が連携を深めるのは、円高や大手メーカーの海外シフトで経営環境が厳しさを増しているためだ。新規事業に乗り出すにせよ、海外市場に打って出るにせよ、中小単独では難しい。ただ、従来の共同受注では損益配分やリスクの所在が曖昧だった。手続きに手間はかかるが、「会社にすることで収支の流れや責任体制は明確にしやすくなる」とN総合会計(大阪市)所長の中島幸子税理士は指摘する。
2011年03月02日 日本経済新聞
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