世相を反映する無彩色

　黒、黒、白、白、黒、黒、白、黒、白、黒、黒、白－。碁石の並びではない。家の近所の車庫に止まっている車の色だ。ミニバン、セダン、軽と車種はさまざまだが、購入して１２年以上になるわが家の青いメタリック車を除き、見事に白か黒に統一されている。

　長男が所属する少年野球チームの遠征や移動に使われる父母の車も無彩色の黒、グレー、シルバー、白が中心だ。街中では鮮やかなメタリック色にも出合うが、大手自動車メーカーの知人いわく「黒、シルバー、白人気は当面続く」らしい。

　「汚れが目立ちにくい」「飽きない」「下取り価格がいいから」といった選び方もあるが、自動車業界では「景気がよくないと無彩色が売れる」というのが定説。当然、メーカーは人気の色を中心に品ぞろえし、中古車の販売も新車に引っ張られる。

　一方で、バブル経済期に高級感のある色として、車や家電製品、家具などで黒が流行したのはよく知られた話だ。そう考えると、黒は好況、不況に左右されないが、グレー、シルバー、白は不況色といえるだろうか。

　先週、有識者でつくる内閣府の研究会が景気動向指数の算出方式を見直したところ、夏時点で東日本大震災前の水準を回復したとされていた景気が、まだ本格回復に至ってないことが分かった。震災などの影響を「異常値」として甘く見積もっていたためだが、国内の経済指標がやたらと回復基調を示し、生活実感から大きくかけ離れていたことを思えば、当然とも言える結果だ。

　景気の低迷は今や世界中を覆っている。米国の住宅バブル崩壊に伴う４年前の低所得者向け高金利型住宅ローン（サブプライムローン）問題は、翌年の米大手投資銀行リーマン・ブラザーズの経営破綻につながり、世界的な金融危機を回避しようとした各国の大規模な財政出動が、現在の世界経済危機を引き起こしている。

　相対的に安全だとして円が買われている日本も、復興増税や子ども手当の見直し、厚生年金保険料引き上げ、さらには消費税増税も予定され、消費や景気の回復が期待できる材料は見当たらない。

　今のようなスカッとしない時代こそ、真っ赤なスポーツカーでもはやらないかと思わなくもないが、わが身を振り返れば色以前の問題で、どんなに甘く見積もっても買い替え自体が望めない状況が続いている。