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[FT]見て見ぬふりが招いたオリンパスの危機(社説)

(2011年10月20日付英フィナンシャル・タイムズ紙)



 オリンパスをのみ込んでいる危機は間違いなく目を引く。説明不足の巨額損失が絡んでおり、企業の頂点で内紛が勃発するという全く日本らしからぬ事態になっている。先日解任された英国人前CEO(最高経営責任者)は、同社の活動に関する証拠書類を英重大不正捜査局(SFO)に提出した。コンセンサス経営も、もはやこれまでだ。



■多くの疑問に未回答



 ありのままの事実を見ても十分ひどい。日本の光学機器メーカーとして高く評価されているオリンパスは、説明不足で、率直に言って不可解な一連の企業買収と手数料支払いに13億ドルものカネを使った。急減するオリンパスの時価総額の約4分の1に相当する金額だ。一連の事実は何年にもわたって秘密にされてきたようだ。



 まだ答えを必要とする疑問が多々ある。例えばオリンパスはいまだに、無関係な事業を手がける企業3社を買収しながら、結局、買収完了から1年以内に買収総額7億7300万ドルの76%を減損処理する羽目になったのか説明していない。



 また、英国企業ジャイラスを20億ドルで買収した件で、なぜオリンパスは6億8700万ドルに上る顧問料を払ったのか、さらには誰が実際にお金を受け取ったのかを明らかにしていない。



■雑誌記事で初めて知った前社長



 しかし、はっきりしているのは、オリンパスの株主がこうした判断から、ほとんどあるいは全く利益を得ていないことだ。一連の判断は少数の上級幹部が下したもので、プードルのような取締役会はきちんとチェックしなかったようだ。



 今後、完全な説明がなされなければならない。しっかりした説明がない限り、この一件から引き出せる論理的な結論は、関係した人々に能力がないか腐敗しているかのどちらかだけだ。



 ブラックホールを暴いたマイケル・ウッドフォード氏が英国人だという事実については、いろいろなことが言われてきた。もしかしたら、より多くを物語るのは、ある日本の雑誌が今夏、オリンパスの不正行為疑惑について報道した時に初めて、ウッドフォード氏が問題に気づいたことかもしれない。



■統治の不備が日本の活力をそぐ



 近年、日本企業はコーポレートガバナンス(企業統治)の強化に取り組んできたが、まだ重大な不備が残っている。オリンパスの騒動は、ほぼすべての不備を浮き彫りにしているように見える。すなわち、上級幹部のアカウンタビリティー(説明責任)を担保する適切な制度の欠如、事を荒立てることに対する文化的な反感、低い情報開示基準、株主による効果的な監視の欠如などだ。



 オリンパスの株主は、損失をかぶるしかないのかもしれない。だが、日本の当局は、ほかの企業を同様な運命から救うために行動を起こすべきだ。日本の優れた製造技術は注目に値するが、生み出された価値は、日本企業の金融慣行のせいで有効活用されないことが多い。



 ガバナンスが改善されなければ、こうした状況は今後も日本の産業の活力をそぎ、成長を妨げ続けることになる。

2011年10月21日 日本経済新聞

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