関西景気判断6カ月ぶり下げ 円高・海外景気が影響
日銀大阪支店は20日、近畿2府4県の10月の地域金融経済概況を発表した。近畿の景気は「緩やかな回復基調にあるが、海外経済減速などの影響が一部にみられ始めている」として、8月に引き上げた景気判断を一転して引き下げた。下方修正は東日本大震災直後の4月以来6カ月ぶり。1ドル=76円台で推移する円高も重荷となり、生産や輸出の停滞が深刻化する可能性がある。
項目別でみると、輸出、生産について「このところ海外経済減速などの影響が一部にみられ始めている」と指摘し、判断を引き下げた。下方修正は輸出が5カ月ぶり、生産は6カ月ぶり。
統計指標をみると、実質輸出は7月が前年同月比0.3%減、8月は2.2%減、企業の生産活動の状況を示す鉱工業生産指数も7月が2.0%減、8月も0.6%減だった。減少幅は小幅ながら、2カ月連続でマイナスが続いていることが下方修正につながった。
住宅投資は改善
企業の設備投資も日銀が集計した2011年度計画が前年度比でマイナス1%となったことを踏まえて、判断を2年6カ月ぶりに下方修正した。円高などで企業収益が悪化していることなどから、「やや弱めの動きがみられる」とした。一方、住宅投資は建設資材不足が解消して着工数が堅調なことから、8カ月ぶりに上方修正した。
関西の企業は超円高が輸出の低迷、ひいては業績の悪化につながることを懸念する。航空機部品を尼崎工場(兵庫県尼崎市)と滋賀工場(滋賀県草津市)で生産する住友精密工業の田岡良夫常務は「円高が収益に大きな影響を与えている」と話す。12年3月期の海外輸出額は前期比3%減の90億円に落ち込む見通し。
欧州では円高で苦しむ日本メーカーを尻目に中国や韓国のメーカーが攻勢を強めている点も見逃せない。ダイキン工業の三中政次副社長(欧州統括会社ダイキンヨーロッパ社長)は「為替変動で韓国や中国のメーカーの製品との価格差が広がっている。韓国メーカーは従来は低価格帯が中心だったが、徐々に価格帯も引き上げてきている」と危機感を募らせる。
中韓から受注減
関西の中小企業は円高に加え、新興国や欧米の景気低迷の影響で、輸出の停滞が長引くことを懸念する。大阪府近郊の工業装置メーカーでは好調だった韓国や中国の企業からの受注が夏ごろから減少し始めたという。外国企業との価格競争で苦戦が続いているだけに、「受注の先行きが見えない」と不安を募らせる。
パナソニックが最新鋭のプラズマパネル工場である尼崎第3工場の稼働停止を含むテレビ事業のリストラを決めたのも円高と海外市場の成長鈍化による輸出の不振が一因。今後は一段と採算を重視する方向で、円高が続けばさらに輸出を絞り込むことになりそうだ。そうなると、また生産にも大きな影響を及ぼす。
日銀大阪支店は「判断は引き下げたものの、全国と比べて際立って関西景気が悪いわけではない」としているが、先行きは厳しさを増している。東日本では震災後の生産回復が著しい自動車産業の比重が高いことに加え、復興需要も見込める。対して、関西は自動車産業の比重も低く、大きな復興需要も期待できない。加えて、冬の電力供給の不安も抱えている。
りそな総合研究所の荒木秀之主任研究員は「東日本に比べて、関西経済の先行きは明るい材料が少なく、見通しにくい」と指摘。海外経済の減速が関西地域の景気にさらに暗い影を落とす可能性は高そうだ。
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日銀が同日公表した10月の「地域経済報告」では、近畿の景気判断は3カ月前に比べ横ばいとした。震災の影響が少なくなりつつある一方、海外経済減速が響いている。今冬に再び電力不足が懸念されるため、先行きにも不透明感が漂う。
2011年10月21日 日本経済新聞
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