「小野市福祉給付制度適正化条例」の論点
○はじめに
兵庫県小野市は、平成25年3月27日の小野市議会定例会において、「小野市福祉給付制度適正化条例」の制定について、
賛成多数(賛成13、反対1、欠席1)で可決した。
同市議会では、平成25年2月27日にこの議案の上程を受け、内容について各議員が内容を精査し、議論を重ねてきた。3月25日に開かれた民生地域常任委員会でも、全会一致で可決されていたという。
同条例可決のニュースが一斉に報道された後は、全国から賛成、反対含めたさまざまな意見が小野市に寄せられ、同市の発表によると、その数は2000件を超えているという。
○小野市福祉給付制度適正化条例とは
同市によると、同条例は、「生活保護法第6条第4項に規定する金銭給付、児童扶養手当法第5条に規定する手当額その他福祉制度に基づく公的な金銭給付について、偽りその他不正な手段による給付を未然に防止するとともに、これらの福祉制度に基づき給付された金銭の受給者が、これらの金銭を、遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、生活の維持、安定向上に努める義務に違反する行為を防止することにより、福祉制度の適正な運用とこれらの金銭の受給者の自立した生活支援に資することを目的」として制定されたものであるという。
この中で、受給者については、
「偽りその他不正な手段を用いて金銭給付を受けてはならないとともに、給付された金銭を、パチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消し、その後の生活の維持、安定向上を図ることができなくなるような事態を招いてはならない」と明記されている。
また、一般の市民については、「受給者に係る偽りその他不正な手段による受給に関する疑い又は給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引き起こしていると認めるときは、速やかに市にその情報を提供する」としており、罰則をともなわない実質上の「通報義務」を規定している。
○条例に対する反論と小野市の意見
同条例に対しては、福祉を専門とする団体などからは、反発が起きている。
貧困対策や社会保障制度の充実を目的とした活動を行っている「生活保護問題対策全国会議」は、同条例が対象としている「受給者」の定義について、「生活保護法第6条第1項に規定する被保護者、児童扶養手当法第4条の規定により児童扶養手当の支給を受けている児童の監護者その他の福祉制度に基づ き給付される金銭給付を受給している者又は受給しようとする者」としていることから、「極めてあいまいで、実質的には市民全員を対象とするものとなっている」として、同条例に反対している。
また、市民に密告を奨励する内容となっていることや、受給者の全生活が監視と規制の対象となる内容となっていることにも異論を唱えている。
全国から寄せられた反対意見に対して、小野市は3月27日にコメントを発表した。
この中で、同市は、「本来、生活の安定向上のために給付される生活保護世帯への保護費や母子家庭等に支給される児童扶養手当を、不正に受給したりギャンブルなどに浪費して生活困窮に陥ることは、誰もが「おかしい」と思われるはず。この「当たり前のことを当たり前に言える環境」を整え、生活保護を含めた福祉給付制度の信頼を取り戻す。
そして、市と地域社会とが一体となって、受給者の自立した生活を支援していくことが、条例の本質である」としている。
また、一部の反対意見で、条例に規定している市民に通報を求める点に関して、「監視社会や偏見を助長する懸念がある」という声があることについては、「小野市のような規模の町では当てはまらない議論。市内各地に昔からの小さなコミュニティが残っており、「監視」ではなく、地域の絆を深める「見守り」社会を目指している。このことは生活に困窮され保護を必要とされている世帯の掘り起しも規定していることからも明らかで、大切なことは、「無関心から関心へ」と市民の意識改革を促すことにある」と結論付けた。
参考リンク
・兵庫県小野市ホームページ
http://www.city.ono.hyogo.jp/
・小野市福祉給付制度適正化条例
http://www.ono-sigikai.jp/users/editor/File/nittei/議案第17号小野市福祉給付制度適正化条例.pdf
2013年03月30日
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