シニアの「終活」の現場から
○はじめに
近年、シニアの間でブームになっていると言われている「終活(しゅうかつ)」。
葬儀や相続など、自分の死後に起こるであろうさまざまな問題について
生前に検討しておき、トラブルを回避することを目的とした活動を指し、
葬祭業だけでなく税理士、司法書士などの士業にとっても、新たなニーズを
掘り起こすことができる機会につながるとして、注目されている。
○終活の現場
「ライフメディア リサーチバンク」が2012年に実施したアンケート調査
によると、「終活」という言葉を知っている人の割合は10%程度で、
消費者の間で広く認知されていると言うにはやや無理がある状況だと言える。
http://research.lifemedia.jp/2012/02/120229_endingnote.html
「終活」マーケットに関わっている葬祭業や墓石、墓地の販売業者らが、
市場を活性化させようとブームを「仕掛けている」最中であるというのが、
実際のところのようだ。
葬祭業に関して言えば、無料の事前相談会や斎場見学会などのイベント
を頻繁に開催することで、消費者が生前に葬儀の内容や価格をあらかじめ
決めたうえで結ぶ「生前契約」にいかにつなげるかが、
「終活」で利益を上げることができるかどうかのポイントとなっている。
近年の葬儀の傾向としては、親族のみが参列する小規模な「家族葬」や、
葬儀の宗教的な部分をなくし、主に火葬のみを行う「直葬」を選択する
消費者が増えていると言われている。
どちらも費用を安く抑えることができるという点で注目を集めており、
直葬においては総額30万円ほどで執り行うことができ、宗教者への
「お布施」も支払わなくて良いことから、特に注目されていると言え
る。
都心のとある地域では、執り行う葬儀の約3割が直葬であるという。
ただ、葬儀を執り行う葬儀社の側にとっては、一回あたりの単価が
極端に低い分、「数」をこなさなければ利益が上がらないという状況が
深刻になってきており、結果的に、葬儀社同士のサービス競争の激化や、
安値競争をあおることにつながっている。
○相続と遺言
一方、終活において、税理士などの士業が直接的に関わりを持つのが、
「相続」の分野である。消費者に対して相続税、贈与税などに関する
アドバイスや、手続の代行などを行う。
相続と深い関わりを持つ「遺言書」についても、士業同士の連携により、
作成のアドバイスから保管、執行までを請け負うサービスを提供する
場合もある。遺言書については、
「遺族にできるだけ面倒をかけたくない」、「自分らしい死後を迎えたい」
との理由から、葬儀の内容など、法的拘束力が生じない事柄についても、
記載を希望する消費者が増えている。なかでも葬儀については、
葬儀の規模や内容、参列して欲しい人の名前、逆に参列して欲しくない
人の名前、宗教者の情報から料理のメニューにいたるまでを
細かく決めておくことで、遺族の手を煩わせることなく、
また、自分の思い通りの葬儀が行えるとあって、特に女性の高齢者の間で
は、
重要視する傾向が強まっている。
また、記載された内容に法的拘束力はないものの、遺言書よりも気軽に
作成することができる「エンディングノート」も、注目を集めている。
エンディングノートは、葬儀の細かい内容だけでなく、亡くなったことを
知らせて欲しい人の名前、逆に知らせて欲しくない人の名前、遺品整理の方法、
思い出の品をプレゼントしたい人の名前など、より具体的で細かな情報を
記入しておくのに向いており、
遺族にとっても、亡くなった個人がどのような人たちと交友があったかなどを
知ることができる大事な情報源となる。
内閣府が発表した「一人暮らし高齢者の指標」によると、
一人暮らしの高齢者の数は2010年時点で、女性が300万人、
男性が124万人で、2020年には女性が360万人、
男性が176万人に達すると予測されている。
www8.cao.go.jp/kourei/kenkyu/sk1rp2.pdf
遺言やエンディングノートは、故人の思いを書き留めておくことに
関して有用であるが、遺族や関係者がその存在に気が付かなければ、
その内容を実行することは困難である。
遺言であれば「執行人」を選任することでトラブルは回避できるが、
一人暮らしの高齢者、いわゆる「おひとりさま」の場合、
故人が亡くなっていることすら誰も気が付かないといった問題を
どう解決するかが、今後の課題と言える。
2013年03月05日
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